『ストーリーが世界を滅ぼす』は、ビジネスマンとマーケッター向けの書き方なので、気になる論点ほど雑になる。サイエンスと心理学がセオリーの代わりかーという感慨。もう少し英文の知を紛れ込ませてもよさそうに思うが…。
シンガー&ブルッキング『「いいね!」戦争』やラニアー『今すぐソーシャルメディアのアカウントを削除するべき10の理由』、バーガー『なぜ「あれ」は流行るのか』、グーバー『成功するための話術』といった他の類書のオピニオンのつぎはぎっぽくて、といっても著者のゴットシャルが半端というよりは、この枠の言説って近傍マーケットのスタイルを回してるジャンルプロダクトなのでは?と思える。著者は「仕上げ」スキルで回してそう。
『ストーリーは世界を滅ぼす』について、アメリカのジャーナリズム情勢に詳しい友人に「こういうのも現代アメリカのジャーナリズムの一つとみるべき?」とか聞いてみたら、大衆の狂気への不安を煽る新保守の現代版だと思う〜、みたいな答えだった。今のアメリカだとジャーナリズム内にいちジャンルを作ってて、認知バイアスや遺伝子論を混ぜる奴だよね?みたいな反応。さすがに『ストーリーは〜』は遺伝子説をやってないんだが、なんかサイエンスを経由して単純なことしか言ってなくね?と思う。
「日本における近似言説(橘玲とか)に比べると学的であったり、民主党に合流可能」な印象もあるが(しかしポパーを振り翳して反共言説をやる)、しかしそれもシカゴスタイルの注の付け方によるところが大きそうだ。
これって日本だと中国脅威論だなー。
ロシアはすでにアメリカを分裂させている!だから、プロパガンダストーリーテラーへの警戒を語るこの著者もプロパガンダライターでは?みたいな疑念がよぎる。
こういう語り口って、ある種のビジネス本から社会問題の本にまで広がってるけど、現代アメリカのジャーナリズム/ノンフィクションのスタイルなのかな。