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【さん喬独演会】2023年6月24日(土)@三鷹市星のホール

[昼の部]
小きち「松竹梅」
さん喬「水屋の富」
さん喬「船徳」
~仲入り~
喬志郎「信心」
さん喬「死神」

[夜の部]
左ん坊「道具や」
さん喬「千両みかん」
さん喬「品川心中(上)」
~仲入り~
小傳次「鹿政談」
さん喬「百年目」

はじめて昼夜でチケットをとってみた。聴きたかったリストの「水屋の富」と「千両みかん」が一挙に聞けてうれしー。水屋の富の水屋の気持ちはすごくわかる。最後の金を獲られたあとの嘆きから安堵に変わるところは、見事としかいいようがない。千両みかんはみかんをおいしそうに食べるさまはもちろんだけど、みかん蔵をあけて、ふわーっと冷気が漏れてくるところの所作が昔から大好き。

キョン師が好きだというさん喬師の「品川心中」は生では初めて聴いた。もしかして27日の古典の風でかけるのかな(キョン師のリクエストで)。その練習かもともちょっと思ったり。ともかく、手入れが入ったかと勘違いして大騒ぎになる親分宅の描写が楽しかった。お染に仕返しにいくところまではやらずに前半のみ。

なんたって一番驚いたのは「死神」。ここ2か月で3回目の死神だったけど、毎回演出が変わって、今日のが決定版というくらいにすごかった。1回目=死神の高笑いの中幕が下りる。2回目=死神の高笑いの背後に三味線が響き、客席の照明が全部落ち、明転すると幕が下りている。3回目(この日)=まず死神に引っぱられて真っ暗な洞窟に入るところで一度客席の照明が全部消える→ろうそくのともった場所に着くと再び照明がON。最後、2回目と同じ演出に加え、死神の「消えた、消えたよ!」の声が初めは中央で、そのあと確かに向かって右手から聞こえた。会場まっくらだから、死神が移動しているみたいで恐ろしいことこの上なし。照明ついたら幕が下りていたが、客席しばらく呆然として、それからようやく大拍手。師匠の探究心ったら!

あと、今日思ったのは、師匠の会はまさにキッチンいなばだな、ってこと。その日の美味しいものをお腹いっぱい食べて帰ってもらいたいというもてなし心がはちきれんばかり。出し惜しみせず、いつもこれも食べて、あれも食べてと身を削って出してくれる。ありがたいったらない。昼の部2時間45分、夜の部3時間のフルフルコース。ごちそうさまでした。

昼の部と夜の部のあいだには、会場すぐ近くの禅林寺に久しぶりに行ってみた。太宰のお墓はお花がたくさん。斜め向かいの森鴎外のお墓にはミニブーケ。

そうだ、思いだしたけど喬志郎師の「信心」っていうのは何だったんだろう。初めて聴いたけど、なんだかひどい噺だし、演じ方も下卑ていて、ちょっと腹が立った。客席の殺気を感じたか、早めに引っ込みすぎて師匠の着替えが間に合わず、とっさにお囃子さんが三味線で「夏は来ぬ」を弾いてつなぐ。

(いま調べたら、正式(?)には「按摩の信心」というタイトルで、もともと上方で「滑稽清水」として演じられていたものらしい。Wikiのあらすじで見るようなほのかな可笑しみも心理の葛藤も何もなかった。時間を返してほしいくらい)

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