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2023年5月20日(土) 紀尾井らくご さん喬独演会

開口一番 小きち「松竹梅」
さん喬「お菊の皿」
さん喬「死神」
~仲入り~
さん喬「徳ちゃん」
さん喬「子別れ」

高座に上がるなり元気がなく、開口一番「今日はすでに四席やっていて疲れ切っています」。確かに本当に疲れた様子だった。直前の朝日名人会で「唐茄子屋政談」をやったばかりとか。でもこうなったら最長不倒を目指すと宣言。結局、どうしてこんなにしてくれるのか?と申し訳なるくらいのサービスぶり。バラエティに富んだ四席(つまりこの日だけで八席!)でとてつもなく楽しませてくれた。この人はすごいな。

さん喬「お菊の皿」
冒頭、独演会っていうのはどうなんだろう…同じ噺ばかりもできないし、おなじみさんの顔も見られるし…さっき朝日の「唐茄子屋政談」を聞いてこちらにも来た方もいるだろうし(実際にいたようだ)…とこぼしつつ、でもご通家の皆さんは同じ噺でも違うところを探して楽しんでくださるのだろう、などといって始まったのがこの一席。寄席でよくかかる噺を選ぶことでその悩みを解消したのかな。

これはどなたがやっても本当に楽しい噺だ。最後の「芝居の臭い」お菊さんのところ、キョン師などは一つ数えるごとにとんでもない動きをしていたが(昔は)、そこまでデフォルメしなくても十分に可笑しい。鳴り物も入り、膝立ちで大熱演。終わってから自分で「やけのやんぱち」というくらいの振り切った楽しい一席だった。さん喬師匠でこれを聞いたのは14年ぶり。

さん喬「死神」
続けて、また聴けた、死神。先週の「あわせ鏡」のときと最後の演出を変えてきた。最後に八五郎が倒れ、死神が高笑いを始めるところで三味線が入り(旋律ではなく、よく場面転換でかかるような切迫したリズムのやつ)、さらに場内の照明がどんどん暗くなってついには真っ暗に。そのなかで響き続ける死神の勝ち誇ったような、愚かな人間を蔑むような笑い声。怖かった。これは本当に怖かった。照明がついたらすでに目の前に幕がおりていた。

昔は、男が倒れ、幕が下がって、いったん沈黙が訪れてから、そのあとで死神のひーっひっひ的な気味の悪い笑いが響く演出をしていたが、これだと幕を下がったのを見たとたんに客はもう終わったと思って拍手を始めてしまって、死神の笑い声とかぶってしまう難があった。先週の「あわせ鏡」のときは、死神が笑い続けているのでそれはなかったものの、やはり幕が下がるのを見て拍手をした人が多かった。今日のはもう、みんな暗闇の中で静まり返って死神の笑うのを聞く以外の選択肢がない。そのあとでじわじわと沸き起こった拍手がまたなんともこの演出に合っていた。

さん喬「徳ちゃん」
中席の池袋でこれを掛けたのを知って、おっと思っていた。聴けるといいなとは思っていたけど、まさかこんなすぐに実現するとは。嬉しい。記録を調べたら14年ぶりだった。とにかく花魁が強烈で強烈で。もうみんな(わたしも)体を前後に揺すったり、膝を叩いたりしての大爆笑の連続。でも冷静に考えちゃうと気の毒なんだよね、この花魁は。満足に食事をする時間もなく何人も客をとらされて、身なりを構っている余裕もないのに、けなげに(不気味な)愛嬌を振りまき、あげくに床を踏みぬいて怪我をする。大笑いしてから、この人にいつかいいことがあるといいなと思った。

さん喬「子別れ」
さん喬師匠の独演会はたいてい三席だから、別に締めが徳ちゃんでもいいかと思った。こんなに疲れた大変な日だし。でも、そんなわけがあるはずもなく、始まったのがなんと子別れ。そんな一日の最後にやる噺かな。すごすぎるよ。

この噺を権太楼‐さん喬のリレーで初めて聴いたときはあまりに号泣してしまって、完全に鼻がつまって呼吸困難になったほど。もうそこまで泣かないけれど、やっぱりハンカチの出番だった。前半部分をさらりとやって、亀と再会するあたりからじっくりと。最後の最後で女房のお徳が絞り出す「ちきしょーーー!!」が好き。そうだよ、さんざん振り回されてひどい目に遭ったのに、いそいそと二つ返事でよりを戻すなんて、いくら落語の世界でも許されない。

終わればぴったり20:30。プロ意識とかサービス精神とか、どんな言葉も追いつかない。相当な負けず嫌い?(自分に対して) かなりのM? ともあれ、寄席の軽い爆笑噺から、じっくりと人情噺、さらには鳥肌の立つ恐ろしい噺まで、すでに四席終えている人の業とは思えない。これを大満足といわずして何と言おう、だよ。

(お菊の皿は9年ぶりだった。まったくもってどうでもいいことだが)

@torajiyama 良かったねぇ、コレを最前列で聴けたんでしょ?ほんとにせっせと聴いてるね。
さん喬師匠も、「あ、またコイツ居る。天狗裁きはまずいか」と思ってるかも。😆 良いんですよ!記録更新かけてるんです!って心で叫びなされ!🤣 🤣 🤣

@spicymargarita2 真正面じゃなくて、高座の少し斜めだったので、師匠がかみしもを切るたびにわたしに向けてずっと話しているような錯覚(妄想w)にとらわれました😍

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