中谷宇吉郎は青空文庫でも読めます。読めます!
国語の教科書で説明文とかエッセイを読んだ時に「この単元楽しかったな」ってなったことがある人はきっといると思うのだが、あの知的な充足感と幸福感が一人の著者でずっと続く感じ。
作家別作品リスト:中谷 宇吉郎 https://www.aozora.gr.jp/index_pages/person1569.html
子どもが「なんで周りと比べて一喜一憂するんだ意味がわからん」と怒っているので「自ら顔は自らで見られないからだよ」と言ったものの本当なのか?と思ったので読んだ。
人間は自分のことは自分でわからず、他人をみて自分自身を確定させていく過程を踏むのだけど、児童期後半になるまでは過去の自分と今の自分を比較して自己評価を行うが、その後は中年期に至るまでの長い間他者との比較行動が抜群に増えそれ以降は少しずつ自分を比較していく状態になっていくとのことである。
自分の幸不幸をも他者と比べるがゆえ、能動的に他者を不幸にして下方におき比較することもある。つまりいじめやネット中傷、人種差別などの原因が人間の性質の一部であることがわかる。
社会的環境も比較行動に表出するであろうが、人間として生きていると比較からは逃れられない。
自らを規定するために他者と比べ喜怒哀楽する生き物であるのは幸せなんだろうか。ちょっとわからなくなった。
自らの心持ちをよりよい状態で維持するには、倫理も必要だし、金も平和も必要だなとつくづく思うなどした。
他者と比べる自分 - 株式会社サイエンス社 株式会社新世社 株式会社数理工学社 https://www.saiensu.co.jp/search/?isbn=978-4-7819-0642-3&y=1992
久しぶりに『銀河鉄道の夜』を読む。昔読んだ時は哀しく美しい話だという印象を持ったくらいであったが、改めて読むと社会的弱者・少数者への精神的暴力の解像度が高いことに気がつく。
未完がゆえのわからなさはあるが、その不安定さがジョバンニの夢や年齢相応のゆらぎと希望を感じさせるようにも思えるし、作品自体が銀河鉄道のようにどこまでもどこまでも行くような気がする。
貧しくふだん同級生や仕事先で虐げられている彼が、汽車の中で他者に憐れみを感じ「ほんとうのさいわい」を考え始めるのは哲学でもあり宮沢賢治自身の背景を考えると非常に宗教的な話であった。
『新編 銀河鉄道の夜』 宮沢賢治 | 新潮社 https://www.shinchosha.co.jp/book/109205/
もんのすごい久しぶりの更新。
このライフワークもあったね、ワイ。
『天体議会』(長野まゆみ)のもじのあじ - もじのあじ https://mojiaji.hatenablog.com/entry/2024/09/11/131319
20年以上ぶりの再読。背景には結構おもしろそうなSF設定が詰まっていそうなのだけどヒントが少ないので、ぼんやりとした妄想で済ませるほかないが、再読してそういった要素もあったんだなと気づいた。
連盟なるものに管理されている人口の激減した世界でおそらく13歳くらいの男の子たちが自分たちの世界のなかで葛藤したり悩んだり嫉妬したりしつつという青少年期の日々を描く。作者のフェチであろうと思わしき要素がぎゅうぎゅうに詰め込まれているのが特徴だが半ズボンの少年やドールのような少年には昔から興味はなかったが(筋骨隆々のオッサンが好きなため)鉱石や鉱石ラジオ、麵麭などと漢字で表記される食べ物には心を動かされたものである。
10代の頃ハマっていたものを何十年も経ってから手に取るとシラケることもあり、この再読もどうなるかな? と思っていたが、頭の中が久しぶりに美しい景色の映像を描いてかなり満足した。
謎の少年は何を表しているのか、少年をバディとする理由など、いろいろと読み解きができそうな気もするのだが、今は霙雨に烟る橡の林の風景に心をひたして伸びやかな気持ちで眠ろうと思う。
天体議会 :長野 まゆみ | 河出書房新社 https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309404240/
#読書 #本
「経済は人々の福祉を高めるためにある」という基本原理上で、福祉とはなにか、福祉を高めるためには?という角度から資源配分という基本課題を考える。自分たちの幸せは誰かがなんとかしてくれもせず運んできてももらえない。
福祉の観点から社会改善を考える知識として携えていたい考え方がつまった一冊だ。
さて、人から勧められた本はたいてい読めないという問題があるこの教養のない猫から一点申し上げるならば、この本を読むのに必要なものは2点あると思う。
1. 学問の「モデル」を想像できる
2. ミクロ経済をある程度知っている
同様に読むのに苦しんだ・挫折した人がいたら、必要なアイテムが足りなかっただけであなたのせいではないと言いたい。
あとがきに「論理を一歩一歩、丁寧に追わなければならないところもあったと思いますが」とある。なかなか厳しい道のりだった。その分成長した気はする。
利潤最大化や限界費用、限界収入を調べないとまったく理解できない部分があるが、そこやパレート効率性およびパレート改善さえ乗り越えれば大丈夫。事前知識はあったほうがよいだろう。ないならば調べながら読むばイケるということを申し送り、終えることする。
幸せのための経済学 - 岩波書店 https://www.iwanami.co.jp/book/b223728.html
再読。西・南・中央・北アジア、ヨーロッパでの乳利用を見ていく。最後には東アジア、オセアニア、赤道付近のアフリカ、南北アメリカ大陸ではなぜ乳利用が行われなかったのかの仮説も紹介されている。
西アジアの乾燥地帯では、熟成させずに天日で乾燥させてカチカチにした乳タンパク質がぎっしりと詰まったチーズがあるそうな。おいしくはないらしい。
チーズといえばスーパーに売っているような熟成チーズやカビを利用したチーズを思い浮かべるが、こちらはヨーロッパの冷涼で湿潤な気候により生み出されたものなのだそうだ。
あまり深く考えたことはなかったが、ヨーロッパのチーズの製法を見ているとあれば、凝乳を脱水し塩水漬けにしたもので、あれは漬物だったんだな、と認識を更新した。そりゃあ、いぶりがっこと一緒に食べても美味しいはずだ。
イタリアのパルミジャーノ・レッジャーノは富の象徴だったとか、白カビチーズが生まれた背景とか、アジア各地の乳利用の違いも面白いので、食べ物の歴史や文化がお好きな方はぜひ。
本書の最後に出てきた、アンデス高地の「チューニョ」が気になりすぎるので、今度はジャガイモの歴史も読みたい。
人とミルクの1万年 - 岩波書店 https://www.iwanami.co.jp/book/b223828.html
世界史の教科書を読んで知りうる限りロシアもキリスト教だが、ロシア文学を読んでいると幽霊が出てくるし不思議だなと思っていたのだが、やはりキリスト教+土着信仰らしい。
祖先の霊の化身などとして家守やら色々なことをするドモヴォイとか、四十日の追善までに姿を表す幽霊は哀しむ近親者を連れ去ろうとするだとか、親しみのある境界のものたちが出てくる。
ときどきグノーシス思想っぽい書き方とかカバラが出てきて、スラブの世界観にそれを持ち込むのはありなのか?どうなんだ?となりはしたが、手に入れやすい形態で海外の民間信仰などの片鱗を読めるのは楽しかった。
ロシア異界幻想 - 岩波書店 https://www.iwanami.co.jp/book/b268591.html
『おむすびの転がる町』
https://www.hakusensha.co.jp/comicslist/56772/
見慣れたと思っている日常の風景に目をこらしてみると、実は日常をすこしスライドさせた不可思議な世界があるのかもしれない、それを見逃しているのは自分の目の解像度が低いからかもしれないと思わせる短編集。
マンガのみならず文章(日記)まで面白い多彩さ。造本から帯、既刊案内隅から隅まで世界観が徹底しているのも、この独特の世界に没入させる手助けをしている。
安心感と不安定さの上で懐かしい匂いが鼻をかすめたときのような。BGMの鳴らない昔のアニメーションを観るような、雨の日の誰もいない路地を覗くような。そんな心持ちで作品を堪能していた。
自分が何かを身につけたい学びたいと思うのなら、長期的に続けること、ただしダラダラ取り組むのではなくしっかり集中すること、省みること、批判を忘れないこと、よく考えること、人間はどうしたって思い込みからは逃れられないので間違っていることに気がついたら修正すること、今に満足しないこと
「おお、わたしなにげにやってたんじゃん」となって自信が出ました。
学ぶことが好き、興味がある、なにかの達人になりたい、子供の学びに悩んでいる人たちはぜひこちらをどうぞ
学びとは何か / 今井むつみ
https://www.iwanami.co.jp/book/b226381.html
そうめったにあることではないが、読書中に「この見出しは内容と一致してないんでは……?」というものに見出しを付け直したりする(今やった)。本を拡張するおもしろさはこういうとこにもある気がする
わたくし一時記憶領域が弱いので、指示語がさすものがなんだったか覚えておけないし、例がなんの例だったかも覚えておけないのよね。
だから、印をつけて補助すると読みやすくなる。
最近の寝る前のお供だった本。
1991年に出版されたもの。欧州の視点で報道される非日常ではなく、生活をベースとした日常を描くもの。
当時の母親世代は洋装を好んでいたが子供世代は肌を出さない服装を守るという状況だったらしい。今はその子供たちが親世代になっているだろう。環境はどう変化しているだろうか。
スカーフを着用して肌も髪も見せないということから、閉鎖的な環境に押し込められてつつましく生活しているようなイメージを抱きがちだが、お祝い事などで女性だけで集まったときのノリは、女子だけが集まった時のアレ。
男性は女子会のお世話をしてくれたりするし、結婚・離婚の時の約束も女性の方が条件が良かったりなど、男性優位の世界になることで起こるいろいろな問題というのを大昔に気づいており決まりでうまいこと運用しようとしたのだろうというイメージになった。
礼拝に行くモスクは毎回場所を変えなさい、帰る時は別の道を通りなさいという教えはめっちゃすごいなと思った。これって出会う人を変えることで人間関係が閉鎖的にならず、無関心や無理解を防ぐものすごくシンプルなコツじゃんっていうね
クルアーンを読んでみたい
イスラームの日常世界 - 岩波書店 https://www.iwanami.co.jp/book/b267973.html
イスラエルに住む、アラブ人キリスト教徒の女性の生活にスポットを当てた絵本。
彼女の1週間の生活をタイムラインとし、日々の食事が中心として配置される。
食べることは生きること。その日が存在するにはそれまでの生活も在る。
彼女の人生と背後にある紛争、マイノリティの社会的地位、女子教育のこと、それでも生活は続くこと。
ある国を知ろうとするなら、人々を自分の隣人と感じられる「日常」を描いたものを読むことは強力だと思った。
シリアスな紹介文にならざるを得ない社会状況であるが、本書に出てくる食事や菓子はあたたかく美味しそうで、それを作るウンム・アザールの誇りに満ち溢れた姿、紛争だけではない中東の姿、そしてそこに生きる人々を知りはじめることのできるすばらしい書物。
ウンム・アーザルのキッチン|福音館書店 https://www.fukuinkan.co.jp/book/?id=7373
推理小説の誕生はポーの『モルグ街の殺人』といわれるが、この作品はそれと同時期に書かれ、かのエラリー・クイーンが古典としてポーの作品と共に列挙しているものである。
わたしはミステリー小説に明るくないため推理小説的手法や表現の是非はわからないが、各章が関係者の手記や手紙であるためそれぞれにバイアスがあり、信頼できないかもしれない語り手たちのクセに注意を払ったり、自分の目星が外れ状況が複雑さを増してきたあたりで頭をひねり「いったいどうなるんだ?」とワクワクし楽しむことができた。
私が好きだった下記の登場人物をあなたもお好きであれば、心が満たされるであろうからぜひお勧めしたい。
ベタレッジ。パイプをふかしながら『ロビンソン・クルーソー』を読むことを幸せとしている老執事。70代。子供の頃より仕えている女主人や、自分の役目に誠実。ときどき「探偵熱」が出てしまうが、それを自分でも気にしている。
カッフ刑事部長、ロンドン警視庁捜査課。イギリス随一の刑事。白髪の痩せ細った男で、相手自身さえ知らないことまで見透かしそうな目をしている。バラに目がなく、バラ園の作りには一家言ある。
月長石 - ウィルキー・コリンズ/中村能三 訳|東京創元社 https://www.tsogen.co.jp/sp/isbn/9784488109011
100分de名著 リチャード・ローティ『偶然性・アイロニー・連帯』 2024年2月
https://www.nhk-book.co.jp/detail/000062231602024.html
めっちゃよかったよ
ローティーの『ロリータ』の読み解きは感動するものがあった。
個人的には「よく生きるとは」仮止め状態であること。というまとめになりましたが、それには自らを訂正もできなければいけないんだよな
『ヘミングウェイ短編集(上)』面白かった。どう解釈して良いのかわからんところだらけだったが、男女の間は全部とにかく不穏ってのが際立つ。男主人公単体であれば冒険心と粗野のカタマリという感じで、思慮とか柔らかさみたいなものが全編ほぼない。他人のとこの男子の行動を見守ってる感はあった。
一瞬で人も世界の風景も構築される筆力はすごくて、チャンク範囲内に構成された見えてくる世界がすごい明瞭。めっちゃ乾いてて怖い。危なくてヤバい。それがいい。
『ふだんづかいの倫理学』平尾昌宏
私たちは一人で好き勝手に、ではなく社会の中で、さまざまな人々と共にバランスをとりながら生きていく必要がある。
本書では、身近な事柄を出発点に、人生のさまざまな面を取り扱うことで、広い視野でバランスよく人生や物語を解釈できるようになること、自分で自分の人生の生き方をデザインできるようになることを目指す。
私が本書を読んだ理由は「再度ネチケットが必要なのでは?」と思ったからだ。倫理を知る必要があると思った。
大昔は一人の人間が交流できる範囲は狭く、影響が及ぶ範囲も狭かった。しかし、その頃にも倫理学は存在した。力を持ち人々に影響を及ぼす権力者は存在していたからだ。彼らには「義務」として道徳・倫理があり、力の暴走を防ぐための知識「倫理学」があったという。
現在、一般人も気軽に移動ができ、インターネットの普及で多くの人々と交流が可能になった。それは、我々が大昔の権力者のように力を暴走させないための知識として倫理学が必要になったということだ。
日々炎上中傷だのを見かける昨今。いまこそ一人ひとりが、ふだんづかいできる倫理学を身につけ、倫理的判断ができるようになる必要があるだろう。
好きなものを好きなようにトゥしています。猫です。
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