『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』観た。わたしは物心ついたときからずっと死にたかったし今も隙あらばと思っているけど、もし10年後、30年後にもちゃんとまだ生きていたとしたら、要因はもちろん他のものもたくさんあるだろうけど、ボウイの思想や生き様の影響がすごく大きいはずで、この思想や生き様をこれ以上ないくらい凝縮したのが本作品。この映画のおかげで生き延びた、と思う日がいつか来るのかもしれない。
ボウイの偉いところは若くして自殺やそれに類する死に方をしなかったことだという言説をどこかで観たことがあるし本当にそうだと思うし、「神を信じるか?何か崇拝しているものは?」と聞かれて「類する概念は信じているけど名前はつけたくない。崇拝…?自分の人生を愛している」と答えたボウイをかっこいいと思うことは、自分の死にたさと相反することになる気がして苦しかった。
インタビュアーの質問とかファンの絶叫以外は全ての言葉がボウイ本人のもので、当人逝去後数年経った今になってこれだけ濃いものを作れるって本当にすごい(観る前はどうせ関係者のコメントとかばっかりなんだろうなと思ってたのでびっくりした)。
チャップリンやメリエスの版権切れ映画の断片もたくさん含まれていたので、教養があるほど楽しめそう。教養がほしい。
音楽はもうこれ編集とか音響とかその辺のやつででかい賞をあげてくれ。よすぎる。ビートルズ『Love』でマーティン親子がやってみせたマッシュアップというかコラージュというか、あれに類する編集がすごく上手い。こういうのがすごく上手いということは、あらゆる使えそうな音源を知り尽くしているということであり、それってLoveってことじゃん。組み合わせ方や「この曲とこの曲を組み合わせるなんて、わかってんね〜!!」と「まさかの選曲だな…でもすごく良い!!」のバランスはもう技術力でしかないのだろうけど。鳥肌立つ編集がたくさんあったし、切り貼りしてない部分でも「この曲ってこんなにかっこよかった?かっこよかったんだな……」と思う部分がたくさんあった。ふんわり「そこまで好きってわけでもないけどかっこいいな〜」と思っていただけのHello Spaceboyでうっかり泣きそうになったし、この映画によって、この曲もボウイの思想や人生を代表する重要な作品だなと気づくことができた。ベルリン時代のところでは政治的影響に関する描写を期待していたけど、意図して控えられていたように思う。それにしてもやっぱりHeroesはかっこいい……