『反「暴君」の思想史』その3
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“「御家の内部から主君の悪事が外部に漏れることを常朝は繰り返し警告している」。「これは見方によっては「忠誠」行動という名のもとに権力の腐敗堕落を糊塗する論理ではあるまいか」。
「このことを裏面からいえば、一般大衆は家臣たちの「忠誠」行動の結果、君主の実像を知ることが妨げられ、一般庶民をも含めた意味での政治社会全体にとっての利益は、以上のような君臣関係においては視野からまったく脱落してしまっている。「人のためになるべしとは、あらゆる人を主君のお役に立つ者に仕立て上げてゆくというふうに心得たらよろしい」と常朝が述べているように、利他的行為の目指すところはすべて「主君」に収斂するのであって、社会全体を視野に収めるものではない。/約言すれば、『葉隠』において「共通善」はまったく問題とならないことになる」。”
反「暴君」の思想史 132
将基面貴巳著
https://www.heibonsha.co.jp/book/b163079.html