難しいところですが、バネット゠ワイザーが「ポピュラー・フェミニズム」を論じたのと似た意味での「ポピュラー男性学」を名指していく必要はあるかな、と思っています。拙著(『新しい声を聞くぼくたち』)はそのような名付けはすることなくそれをすでに論じたのですが。もちろん、「男性学なんてポピュラーじゃないよ」という声もありそうだし、やり方によっては内ゲバっぽくなってしまってよくないのですが。それでも、ポピュラー男性学的な主体のヘゲモニーがどのような布置の中にあるのかは見すえていかなくてはいけないかなと。どれだけ人気が出なくても、ある種嫌われても、と。この次のフェーズの準備として、という感じです。(ポストフェミニズムについての議論も同じ。)
3月11日(土)、オーウェルをめぐる多彩なイベントです。後半戦のシンポジウムに私も登壇します。オーウェルの男性性について考えてみたいと考え中。
【文学部・大学院文学研究科学術交流企画】ジョージ・オーウェル生誕120 周年記念イベント「暗闇のなかの希望」 | 日本女子大学 https://www.jwu.ac.jp/unv/lecture_news/2022/20230123_02.html
共訳書のアンジェラ・マクロビー『フェミニズムとレジリエンスの政治』(青土社)の増刷が決まりました! ミソジニーと反福祉の感情がないまぜになった動きが日本でも目立つ中、そのような流れに対抗する知恵を与えてくれる一冊だと思います。引きつづきよろしくお願いします!
http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3717
朝日新聞デジタルの『風の谷のナウシカ』をめぐる連載、本日は恥ずかしながら私の回となります。有料記事ですが、よろしければご笑覧ください!
https://digital.asahi.com/articles/ASQDH7JY4QC9UCVL024.html?iref=pc_rensai_short_1207_article_16
Twitterでぐちゃぐちゃ書いたことをまとめてみる。
『機動戦士ガンダム 水星の魔女』は、起業物語になってからはちょっと冷めた目で見てしまっています。ただ、「大人たちへの反乱としての起業」という物語類型は検討の余地がありそうな気がします。今思いついている作品は『銀の匙』と『天気の子』。(他にあったら教えて!)
ひとつの疑問は、現在の若い人にとって、起業というものがオルタナティヴな社会や人生を想像するための有効なアイデアになり得ているのかどうか。
私の場合、90年代に学生をやっていて、身のまわりでも意識が高そうな人たちは一斉に起業に走った。それは(反転された)革命の雰囲気でした。肯定するか否定するかはともかくとして。
そこから時代は一回りして、「起業」はどうなっているのか。それで気になるのは、上記の作品の作り手が60年代終わり〜70年代半ば生まれであって、私と広めの同世代と言っていいという点。(『水星の魔女』の構成・脚本の大河内一楼氏は68年生まれ。)起業にある種の希望を乗せてしまうのは、ある世代の手癖みたいなものかもしれず、どうなん?と思う部分があるのです。
ずっと引っかかっているのは、「比喩を別の比喩で置きかえる」ことは批評なんだろうか、ということ。いや、その考え方は、文学と批評を切り分けていてよろしくないというのは分かっているし、秀逸な批評は秀逸な比喩を使うんだとも思いますが。ただ、「すごく面白いんだけど、これは比喩を比喩でうまく置きかえただけだよね」と思わせるような種類の「批評」が存在することも確か、というか見方によってはほとんどの批評がそうかもしれず。
ここのところ、「イデオロギーを下部構造としてとらえてしまう」という畏友の言葉がずっとひっかかっていて、比喩を脱して下部構造に向かうような言葉こそ批評であるという部分を、もう一度考えておきたいというか。よく分かりませんねすみません。
『新しい声を聞くぼくたち』では『怪獣8号』を憑依系→男性性の「補綴」の型として捉えたんですが、それの肝心の起源って『ウルトラマン』なんですよね……。すっぽり抜けていた。
『鉄腕バーディー』なんて、明確にウルトラマンのジェンダーをひっくり返した作品だったわけで。その線で色々洗い直してみるか。
今週土曜の川崎市の講演会ですが、対象者の居住地域の制限をなくしたそうです。30歳未満であればどなたでもご参加いただけます。インタラクティヴな講演会となります。座って話を聞くだけではなく、声を出して考えてみよう、というセッションを設けます。ぜひ!
”ぼくたち” は”新しい声”をどう聞くのか | 川崎市男女共同参画センター https://www.scrum21.or.jp/seminar/sc39404.html
大学教員。専門はこの世。国立人文研究所理事。『正義はどこへ行くのか』(集英社新書)、『はたらく物語』(笠間書院)、『増補 戦う姫、働く少女』(ちくま文庫)、『この自由な世界と私たちの帰る場所』(青土社)、『新しい声を聞くぼくたち』(講談社)、翻訳W・ブラウン『新自由主義の廃墟で』(人文書院)、A・マクロビー『フェミニズムとレジリエンスの政治』(共訳、青土社)。ご連絡はs_kono400あっとhttps://www.yahoo.co.jp/