大きな破裂音と共に中身が溢れだす。俺の指輪とカードにファリアが驚いていた。ファリアのクラッカーからはメッセージカードと包装紙に包まれたお菓子(チョコレートだった)が出て来た。ファリアらしさに微笑ましく思いながらメッセージカードを読むと短く『並べろ』と書いてある。よく見ると包装紙には数字がふってあって「1」のものを開けてみるとチョコレートには「H」の文字が刻まれていた。「これ手作りしたの?」と聞くとファリアは頷いた。皿の上に番号順に並べていくとそれは『Hold my hand. I want to grow old with you.』と言う文章になり最後の一つはチョコ製の指輪が入っていた。俺はファリアを見くびっていたようだ。俺が思ってるよりずっとロマンチストじゃないか!「思ってた以上に恥ずかしいな、これ!」耳まで赤くなってるファリアの手を強く握りしめた。
俺たちは選ぶ言葉も似てたよなと、クリスマスが来るたびに笑い合うことになる。何年も何年も。
Hold my hand. I want to grow old with you.(手を握ってください。あなたと歳を重ねていきたいのです)
『I want to be with you forever and ever.(あなたと永遠に一緒にいたい)』
クリスマスクラッカーに指輪と求婚のメッセージカードを入れるなんて、あまりに狙いすぎてて俺には絶対無理だと昔は思っていた。あの頃の自分に教えてやりたい。人を愛したら恥ずかしいもクソもないのだと。そしてファリアはロマンチックなことが結構好きだ。
そんな訳で今年のクリスマスにはそれを用意した。両思いになってそれなりの時を過ごした。二人だけのクリスマスにクリスマスクラッカーがあるのだから鈍くないファリアなら中身の予想をつけてきそうだけどそれでいいのだ。
そして二人で準備した料理やケーキの前に座る。テーブルの上にはクリスマスクラッカーが二つあった。「これファリアが用意したの?」「お前も用意してたんだな」顔を見合わせてくすくす笑う。
『言わせたい』
あまりにもファリアの作ったクッキーが美味しそうだったので一枚つまみ食いをしたら早々にバレてしまった。ファリアは呆れた風に「相変わらず『待て』のできない男だなぁ」ともう耳にタコが出来るほど聞いた台詞を口にする。「美味しいものの前で待てなんてできないよ。俺に待て待てって言うけど、ファリアはどうなんだよ」つい拗ねた口調でそう言い返しってしまったが、ファリアはひょいっと眉を上げると「俺は待てが上手いぞ」と言った。「上手いし得意だ。どんなに欲しいと思っても口に出さず慎み深く、待ってる」そうだろ?という言葉で俺はやっとピンときた。「ファリア、今もしかしてエッチな話してる?」ファリアは魅惑的な表情がその答えだった。「そこはさ、待たないでもっと口に出して言ってよ!」恋人から『欲しい』言われて喜ばないやつなっていないというのに。ファリアは、お前は待たないし察しも悪くないからこれで丁度いいだろなどと笑うから、その通りとばかりに抱き寄せた。でも今夜は絶対ファリアの口から欲しいと言わせて見せると心に誓いながら熱い口付けを交わした。
数年ぶりにクリスマス帰省するコリンズが本日何度目かの「やっぱり帰るのやめようかな」という台詞を吐いた。数日とはいえファリアと離れたくないと言う。ファリアも一緒に来ないかと誘われたが二人の仲を秘密にしたままコリンズの家族に会うのは気が引けた。
戦前何度か会ったことのある彼らは本当に良い人達だっただけにいつか堂々と会える時が来ればいいとファリアは思っている。コリンズが望んでいたとはいえ何年もクリスマスにコリンズを独占していたことを申し訳なく思っていたファリアは、今回の帰省ではうんと家族孝行をして欲しいのだった。
そんなことを思って帰省させることに積極的なファリアにコリンズが「俺がいなくても寂しくないの?」なとど拗ねてみせるのは恋人同士のじゃれあいのうちである。
「ちゃんと待っててね」そう言って家を出たコリンズの背中を見送りながら、「待てるさ」とファリアは呟いた。
まだ半分もお湯の溜まっていないバスタブにファリアは体を浸した。膝を抱えて暫く待つと体が温まってきたので寛いだ姿勢を取ったが背中に当たったバスタブの冷たさに思わず声が出た。「だからもうちょっと待ってって言ったのに」バスルームに入ってきたコリンズが笑いながら言った。
コリンズがファリアと向かい合うようにバスタブに入ると丁度いいくらいの湯の量になった。「ファリア、ほらこっち来て俺にもたれてよ」コリンズが両手を広げるとファリアは素直にその腕に収まる。湯で温めるまでもなくコリンズの体は温かい。
「俺、こういう時幸せだなぁって思うんだよね」このままずっとお風呂に入ってたいくらいとコリンズが言う。ファリアも同感だった。こんな風に後ろからコリンズに抱き抱えられるのが実はとても好きだった。コリンズに体を預けて目を閉じる。二人が一つになったようで気持ちがいい。
「それはそうとしてね、俺は早くファリアを抱きたいんだけど」とコリンズがファリアの耳元で囁くのにそう時間はかからなかったが、それについても全く同意だったのでファリアは振り向いてコリンズに口付けた。
ファリアが美人とデートしていた。基地内にそんな噂が流れた。デートくらい誰だってするかもしれないがあのファリアがと言うとこがミソらしい。遂に春が来たのかと俺にまで話を振ってくる。
ふん、馬鹿らしい。そんなわけあるか、俺は何も聞いてない!
なんて言っても笑われるだけだから言わないが。
しかし誰もファリア本人にその話をしていないらしい。暖かく見守ってるんだなどと笑っていたがあれは賭けをしてるんだと思う。それから暫くしてどこか寂しげにしてるファリアの姿が目撃されてそれ以降デートをしてる様子がないことから、これで慰めてやれと賭けに勝ったやつから酒代を渡された。
「で、それがこのクッキーになったのか」ファリアが苦笑していた。お前はどう思ってたんだなどと聞くから「俺の推理では子犬が1匹減ってるから里親探しで美人と会ってて無事に犬は引き取られその犬との別れで寂しくなってた、なんだけど?」ファリアは当たりだからこれはお前が食えと大笑いしていた。
fkmt作品(南赤南)/ジパング(草松)/洋画(コリファリ/🍋🍊) 最近はSD(714)多め
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