『言わせたい』
あまりにもファリアの作ったクッキーが美味しそうだったので一枚つまみ食いをしたら早々にバレてしまった。ファリアは呆れた風に「相変わらず『待て』のできない男だなぁ」ともう耳にタコが出来るほど聞いた台詞を口にする。「美味しいものの前で待てなんてできないよ。俺に待て待てって言うけど、ファリアはどうなんだよ」つい拗ねた口調でそう言い返しってしまったが、ファリアはひょいっと眉を上げると「俺は待てが上手いぞ」と言った。「上手いし得意だ。どんなに欲しいと思っても口に出さず慎み深く、待ってる」そうだろ?という言葉で俺はやっとピンときた。「ファリア、今もしかしてエッチな話してる?」ファリアは魅惑的な表情がその答えだった。「そこはさ、待たないでもっと口に出して言ってよ!」恋人から『欲しい』言われて喜ばないやつなっていないというのに。ファリアは、お前は待たないし察しも悪くないからこれで丁度いいだろなどと笑うから、その通りとばかりに抱き寄せた。でも今夜は絶対ファリアの口から欲しいと言わせて見せると心に誓いながら熱い口付けを交わした。