漫画『となりの百怪見聞録』を読んだ
一巻のカバー絵のとおり、30代?の装丁家の男性が、魔性の和服老紳士にひかれたり、本物の魔物にまとわりつかれたり、それを老紳士にうらやましがられる三角関係。
魔物の描写は、幻想的でもあり、現代の実録怪談寄りでもあり、けっこう怖いのではないか。
作風は、ハルタ掲載作品的というか、やわらかく、描き込まれた、大人向け漫画。
不幸な子ども、虐待されていたと思われる子どもの話はつらい。
本のカバーデザイン、扉から奥付までのデザインだけでなく、製本(修復)までやる話は、装丁の全作業という感じで、個人的にあこがれの仕事だった。
読んでいる間、どうしても平田オリザ氏が頭にちらついてしまう(著者がお好きなのだろうか)
『うしろの百太郎』にはかけていないと思う。
本作は女性作家による妖怪・怪奇漫画ジャンルだけど、男性作家の『裏世界ピクニック』といい、怪奇な世界との冒険を通じて、他の人と親密になり、心の傷と向き合うという話の流れがあるな。
https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents_amp.html?isbn=978-4-08-892577-6
シマ・シンヤ『Gutsy Gritty Girl』
Amazonのおすすめに出てきた漫画で、作者のデビュー作を含む短編集。
アジア人がアジア人らしい顔立ちというか、カートゥーン的というか、グラフィックデザインとして完成度の高い画風が小気味よい。
どのストーリーもこなれている感じがするが、タフな中高年女性達が、崩壊した地球の村でせっせとサバイバルする「Good Morning Ladies」が一番好き。
男性キャラの弱さの描き方もいい。
6/30はアステロイドデーということで、翌日の今日、日本スペースガード協会主催の、プラネタリーディフェンスのイベント配信を聞いていた。
衝突したら甚大な被害の出る小惑星が近傍に大量にぐるぐるしているのに、今まで幸運すぎないか、地球生命。
小惑星を知ることで、生命の起源や絶滅の原因を知ることができるのも面白い。
探査の邪魔になるデブリは減らしたいし、予算増えてほしい。
https://www.spaceguard.or.jp/html/ja/EVENT/asteroid_day2023/asteroidday2023.html
ラジオドラマ『ラングドックの薔薇』感想
昔のフランスの若い騎士の冒険譚だと思って聞き始めたが、はたして、ドン・キホーテが読み漁ったような騎士道物語か。
舞台は、現代でいうフランス南部の、13世紀。
北部の王朝に押される南部の領主達と、教皇庁に異端として弾圧される民衆。
かつては南北で文化が大きく異なっていた。
カタリ派は世界史の教科書で知ったが、Wikipediaを読むだに過酷な歴史。消え去ったが、当時どれほど広まっていたのか。
(厭世主義は他宗教の影響を受けていそうだと思ったが、カタリ派の前も後も、圧政に抵抗する運動は何度も起こった)
ドラマは、確かな声優陣と、中世風のテーマ音楽、欧州の歴史作品で活躍する並木陽の脚本で、当時の様々な立場の人間達の、熱い冒険あり、温かな交流あり。人の成長や善意が勝利する、さわやかな印象だった。
政略結婚させられながらも故郷を気づかう姫、領民の死を悔恨する騎士、彼らを庇護する英明な女領主、戦争以外の平和の道を探る女達。そんな人々は、いなかったかもしれないし、いたかもしれない。
零落した騎士として登場した主人公ペイレ、その才気と苦悩。意思強く、力弱い人を助ける忠義。自分の信念を貫き、困難に立ち向かう。それが騎士道。
壮絶な終わりの暗示に震えるが、誠実な生き方が好ましい。
ゲーテのことを、自分は「もっと光を」という言葉くらいしか知らないけど
文学者のイメージなのに色彩論という著作があるのは、ニュートンの光学のせいなのかな
と思ったら、そういう流れのようだった。
今でもグラフィックデザインで習う色相環も考えていたのか。
光と色をめぐる ニュートンとゲーテの立場|公益社団法人 日本心理学会
https://psych.or.jp/wp-content/uploads/old/51-42.pdf
漫画、SF、動植物などが好き