ラジオドラマ『ラングドックの薔薇』感想
昔のフランスの若い騎士の冒険譚だと思って聞き始めたが、はたして、ドン・キホーテが読み漁ったような騎士道物語か。
舞台は、現代でいうフランス南部の、13世紀。
北部の王朝に押される南部の領主達と、教皇庁に異端として弾圧される民衆。
かつては南北で文化が大きく異なっていた。
カタリ派は世界史の教科書で知ったが、Wikipediaを読むだに過酷な歴史。消え去ったが、当時どれほど広まっていたのか。
(厭世主義は他宗教の影響を受けていそうだと思ったが、カタリ派の前も後も、圧政に抵抗する運動は何度も起こった)
ドラマは、確かな声優陣と、中世風のテーマ音楽、欧州の歴史作品で活躍する並木陽の脚本で、当時の様々な立場の人間達の、熱い冒険あり、温かな交流あり。人の成長や善意が勝利する、さわやかな印象だった。
政略結婚させられながらも故郷を気づかう姫、領民の死を悔恨する騎士、彼らを庇護する英明な女領主、戦争以外の平和の道を探る女達。そんな人々は、いなかったかもしれないし、いたかもしれない。
零落した騎士として登場した主人公ペイレ、その才気と苦悩。意思強く、力弱い人を助ける忠義。自分の信念を貫き、困難に立ち向かう。それが騎士道。
壮絶な終わりの暗示に震えるが、誠実な生き方が好ましい。