「……あっ」
声が出て、口を押さえた。そうしなければ叫ぶか、もっとすると泣き出してさえしまいそうだった。気づいてしまった。
僕の願いはもうすぐ叶えられる。だのに、どうしてこんなに何度も彼を見舞うのか。今日は起きているか、苦しくないか、食欲はあるか、見舞いの品を気に入るだろうか。なんてことを、どうして考えているのか。彼にしてほしいことは全て終わったのに、僕は。僕の願いは、変わっている。
死なないでくれ。
ソロモン、起きて、生きていてくれ。
今すぐ体を揺さぶって目を覚ましてほしかった。食事を食べ、共に出かけ、明日も明後日もそうしてほしかった。そんなことがヴァイガルドにとって何の役にも立たないとしても。何者にも評価されない無価値なことをまだきみと続けたかった。
ソロモンの死を持ってフォルネウスの一生は証明される。フォルネウスはたしかにヴァイガルドに刻まれる。己の生涯が無に帰すことはない。だというのに。寒気のするような孤独が、ソロモンのいない世界ではじまるのだということに、フォルネウスはようやく気がついたのだった。
↑これ8章2節の内容から既に外れてる気がするけど、それでも1回書かせてください やれること全部やっときたいので