「今夜、花山の古御所で会合して計略をめぐらしたい」
との密書が袴垂保輔から平貞盛に送られてくる。これが序幕の「諸羽社の場」でのことで、『戻橋背御摂』のストーリーの一筋が「花山の古御所」に向かうだろうことが当初から示唆されている。
計略をめぐらす場所を古御所としたのは作者の恣意。ストーリー展開のうえでの必然といったものはない。何の計略をめぐらすかも不明。

南北にとって、花山の古御所とは何か。
権威の不在を象徴するイメージ、それがこの古御所だろう。帝が御所を捨てて行方知れず。残されて荒れ果てた御所。そのアナーキーが南北好みなのではないか。
事実としての歴史をたどれば皇位の空白は埋められるが、南北はそれをしない。アナーキーなまま放置して、その上に『戻橋背御摂』を組み立てている。
代わって空位を襲うのが、髭黒の左大将道包という悪役。『戻橋背御摂』前半の時と所はあちこちしているかのようだが、よく見れば髭黒公の皇位僭称に至る一日二日のこと。

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