若本衣織『忌狩怪談 闇路』。非常に映像的でありながら、決してカメラを置けないような位置から描写する筆致の巧みさ。出来事の強さだけでも成立してしまうジャンルで、明確に運動を書くことを志向している。「外怪談」や「あの山のコンコンさん」なんかは下手な映画よりも映画的愉悦に満ちている。
文字は映像よりも音の再生装置だから、目にも耳にもリズミカルな配置も重要で、これもまたおそろしいほど洗練されている。内容としても「見つけてしまう」よりも「見つかってしまう」ことのほうがずっと怖いので、すごく好み。実話怪談本をナメている人にもおすすめ。
出来事でなく運動に比重を置いた書き方であることの何がすごいって、実話怪談は基本「聞かせてもらった話を語り直す」ものなわけだけれど、この本は「自分で見たわけでもない、人から聞いた話を、体験者以上の観察眼で冷徹に解剖するようにして書く」をやっているんだよ。
https://www.amazon.co.jp/忌狩怪談-闇路-仮-竹書房怪談文庫-HO-613/dp/4801935443
【宣伝②】
蟹の親子&柿内正午「日記から始めるおしゃべり会」@本の栞(神戸・元町)
■日時
2023年6月11日(日)13時開始
■料金
1500円+ワンドリンクオーダー
■ところ
本の栞
〒650-0022
神戸市中央区元町通4丁目6-26
080-3855-6606
https://honnosiori.buyshop.jp
■ご予約
furuhonnosiori@gmail.com
こちらのメールアドレスに「予約のお名前/人数/電話番号」を記載の上ご連絡ください。
蟹の親子さんと日記をとっかかりに、本を作って売ること、読んだり書いたりすることなど、参加者の方々も交えてあれこれおしゃべりします。ぜひぜひ〜
日々の行き詰まりは誰も助けてくれそうになくて、公人によるあまりにも素朴な論理的整合性すらふみにじっていくような痴態がまかり通り、ただ生きていくために要求される金銭だけが膨らんでいく。そりゃキレるという話なのだが、その怒号の向き先がおなじようにくたびれた警備員やタクシー運転手であるところに救いのなさも感じてしまう。
【宣伝②】
蟹の親子&柿内正午「日記から始めるおしゃべり会」@本の栞(神戸・元町)
■日時
2023年6月11日(日)13時開始
■料金
1500円+ワンドリンクオーダー
■ところ
本の栞
〒650-0022
神戸市中央区元町通4丁目6-26
080-3855-6606
https://honnosiori.buyshop.jp
■ご予約
furuhonnosiori@gmail.com
こちらのメールアドレスに「予約のお名前/人数/電話番号」を記載の上ご連絡ください。
蟹の親子さんと日記をとっかかりに、本を作って売ること、読んだり書いたりすることなど、参加者の方々も交えてあれこれおしゃべりします。ぜひぜひ〜
【宣伝①】
スズキナオ×柿内正午「日々をななめに読み替える」『会社員の哲学 増補版』刊行記念トークイベント
会場 スタンダードブックストア2Fギャラリー(大阪・天王寺)
日時 2023年6月10日(土)19:00~ 20:30頃終了予定
チケット ¥1,650
ご予約はこちらから! →https://standardbook.thebase.in/items/73922259
ライターのスズキナオさんとともに、会社員という経験、他者を面白がる方法、日々のささやかな喜びを発見する目の養い方、読んできた本の話、などなど、「鹿爪らしくなく、とはいえ現状追認しているわけでもない、他者や社会にひらかれつつごきげんに過ごす」ための日々の実践についてお話しできればと考えています。
生活というのは、基本的に保守である。日々の習慣は安定して円環的な時間を必要とするからだ。毎日の生活すら覚束ないとき、そもそも維持するべき安定がないのだから、まずは自分たちも安定できるような社会をくれよと革新を求めることになる。誰かの革新とは誰かの安定への権利要求であり、すでに安定しているべつの誰かは、安定の拡大を共に求めてより一層の盤石さを実現するように働きかけるほうが有効であると考えている。現行の政治が従来の安定を根扱ぎにするようなことばかりするようなとき、生活の保守性とは政治の革新として表明されるほかない。生活の上では保守的でありつつ、政治の現場では革新を支持するというのはこういうことではないだろうか。このねじれが直観に反するようで、長い間うまくイメージがまとまらなかった。
JTC(Japanese Traditional Company)の福利厚生をはじめとした恩恵ってやはりすごいのだけど、設計として「過酷な労働を薄給のまま何年か耐え忍ぶと、ようやく労働内容と待遇とが(そこそこ上振れした形で)釣り合ってくる」というものだから、いまみたいに社会全体が貧しくなっていると、手ぶらで前段の「過酷な労働を薄給のまま何年か耐え忍ぶ」の難易度が跳ね上がっている。その結果、けっきょくは働きはじめに給与以外のサポート(実家が太いとか、貯蓄があるとか、べつに稼ぎがあるとか)がある人だけが消耗せずに次のステップに進めて、生活のために労働するような人たちはおいしい部分に辿り着く前にくたびれて辞めてしまうことになる。もとから金に困ってない人からどんどん金に困らなくなり、困っている人はますます困る構造になってる。
SNSで誇張され顕在化した「書いてあることを書いてある通りに読むことのできなさ」って、すべてのテキストをエアリプとして読むような態度が一因なのではないか。大多数のテキストは自分になんの関心もないという当然のことを、ひょっとして自分のアレへのエアリプではという想像が見失わせがちというか、タイムラインやフィード上に並置されると、場の共有と文脈の共有が取り違えられがちというか。
かきないしょうご。会社員。文筆。■著書『プルーストを読む生活』(H.A.B) 『雑談・オブ・ザ・デッド』(ZINE)等■寄稿『文學界』他 ■Podcast「 ポイエティークRADIO 」毎週月曜配信中。 ■最高のアイコンは箕輪麻紀子さん作