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ハンチバック 

社会的に性とは結び付けられにくい清い存在として見られがちな障害者女性である(そして実際清い人生を送っている)主人公のゲスいとも言える性への執着心が、「生きづらい世の中になった」と嘆くヤフコメ民や文化人、スポーツ界をマッチョだと毛嫌いしながらもそんなスポーツ界よりも遥かにマチズモの象徴である紙の本に執着する読書文化といった社会全体を薄ら小馬鹿にしているようで小気味よかった。

その中でも中絶への強い羨望が印象的だった。単に中絶を巡って衝突していた女性団体と障害者団体の両団体や古くなっても変わらず美しいままのモナリザのような存在への当てつけというだけでなく社会全体への抵抗のように私には思えた。

布団の中から蜂起せよ 

アナーカーフェミニストである著者が抱える社会への不満、そしてその社会へのささやかな抵抗やそれでもそんな社会に迎合してしまう部分について痛いほど伝わってきた。

他にも自身が抱えている暴力性や一見政治性の無さそうなイベント事や創作物へのモヤモヤを余すことなく書き出していて面白かった。

特に一番好きなのは、安倍晋三の私邸に武装して侵入した女が逮捕された事件に対して興味を抱いたところ。確かに無差別殺人とはいっても大体狙われるのは女性や子どもといった「狙いやすそうな」人たちが犠牲になるケースが多い中、わざわざ権力者を狙ったのは興味深いしその件については私自身も感心した。(もちろん、行動は褒められたものではないけど)

社会に不満を抱えているけれどもうまく吐き出せない人にはぜひおすすめしたい本。

トランスジェンダー入門 

トランスジェンダーに対してよくある誤解や「素朴な疑問」に対して丁寧かつわかりやすく答えるだけでなく、シスジェンダーにとっては問題なく過ごせていても当事者にとっては障壁となる場の説明や、特例法や医療の問題点も解説していて「入門」として適切な本だった

特例法は文字通り救われた当事者もいたんだろうけど、私的には戸籍や異性愛至上主義といった問題点から目を逸らしていて当事者を家父長制の枠からはみ出ないようにした法律だと思ってるし、医療において特に自分史の必要性ないだろと(医療に対して)言いたくなる。
本にも書いてある通り大事なのは今までの人生よりもこれからの人生だし、第一医者からジャッジをもらう必要性を感じない。

一方で、当事者といっても多種多様だから障壁の部分とかで一概に当事者はそうみたいな書き方や、ノンバイナリーの説明が申し訳程度だったのが気になった。

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