「既得権益」とされるものへの憎悪、歴史的には「部落解放同盟」とか「在日特権」あたりからはじまって、そのたびごとに恣意的に敵を替えつつ現在にいたる感じか。
アテンションつーか火をつけて回るビジネスが成立してしまったので、それ専門のガベッジ野郎が次から次へと出てくる。
こうした〈叩かれてきたもの〉の歴史的変遷をたどったのが、能川元一さんとの共著『憎悪の広告』なんですよね。ターゲットとされたものへの攻撃の執拗さと定着度合い、その反面にあるターゲットの移ろいやすさも含めて、クソい右派論壇誌の広告から可視化していくという企画でした。
親切な研究者の方から、唯物論研究協会編『唯物論研究年誌第29号 特集:ケアと資本主義』(大月書店、2024年)をもらったので読み始めるも、特集冒頭の「ケアと資本主義――特集にあたって」に、
「〈ケア〉の議論が盛んになった背景には、言うまでもなく新自由主義、グローバリズムが進めた市場化、商品化の徹底がある。ケア領域も商品化、市場化の対象となり、ケアの営みは市場や商品としての性格を帯びるようになっている」
――という一節があって、金子ハルオを筆頭として70年にわたって積み上げられてきた「サービス労働論」の枠組みが(たとえそれが瓦礫の山であったとしても)みごとに蒸発しており、「ケアの営みは市場や商品としての性格を帯びるようになっている」って最近そうなったのかよ的な新鮮さで書かれていて、なんとも引っかかってしまい一旦閉じた。
ロヒンギャは組織の名前じゃねえよカスというのは前提として、武装闘争形態をも展開する反政府勢力をごくあっさりと当該地域の権力の口吻にならって「テロ組織」と呼べてしまうのなんで? なんでそんなにチョロいの?
「ウィキペディア三大文学」の一つとして知られる「地方病 (日本住血吸虫症)」、同項目で参考文献筆頭に挙げられている小林照幸『死の貝:日本住血吸虫症との闘い』(新潮文庫版)が復刊されていたので購入、寝る前に一気に読んだ。
日本住血吸虫発見までの道のりが、先人の苦労が多くて泣けてくるが、日本住血吸虫の生活史をどのように解明していったのかのあたり、Wikipediaでは要領よくまとめてあるが、各地の医師たちの探究と悩み、困難も含めて描かれており、かなりおもしろかった。
古新聞を整理していてみつけた、産経新聞2023年12月21日付け掲載の投書。「テロ殲滅は国家として当然」という76歳男性。イスラエル=主権国家、ハマス=テロ組織という二分法による1bit世界観だが、その世界観にもとづいて「殲滅せよ」と死のアジテーションを投書してしまう熱意にたじろぐ。
「大東亜戦争」以前の東南アジア地域における武装闘争形態を伴った民族運動にも「テロ組織」って規定しそう。その上で「大東亜戦争がアジアを解放した」って言いそうだなと思った。
朝日新聞2024年1月24日付で採取した書籍広告。「産婦人科医が直感で気づいた“神社一帯はまるて妊婦のようだ"」という惹句をはじめ、「直感で古代を見る」とか、なんとも言えないオーラが立ち上っている。
編集業。하야카와 타다노리 。『神国日本のトンデモ決戦生活』(合同出版→ちくま文庫)『原発ユートピア日本』(合同出版)『「愛国」の技法』(青弓社)『憎悪の広告』(共著、合同出版)『「日本スゴイ」のディストピア』(青弓社→朝日新聞出版)あり。 真理が我らを自由にする&労働が我らを自由にする。