早川書房より献本拝受。
SFマガジン2024年12月号は〈ラテンアメリカSF特集〉です。10月25日(つまり、明日!)発売。

アルフレッド・ベスター『分解された男』の原文・沼沢洽治訳・伊藤典夫訳の読み比べ。
原文は「コップの中の目」をタイポグラフィでやっていて、伊藤訳は日本語でそのまま再現しようとしている。一方、沼沢訳は「箱入り娘=箱の中にメ」と大胆に改変している。

原文はeye in a stein = Einstein、要するにアインシュタインという洒落をかましているんだけど、これを伊藤典夫訳では保存しようとしている。ただ、沼沢訳の大胆さも魅力。

パット・キャディガン「通りすがりの親切」(日本版オムニ1986年8月号/日向美鶴子訳)読んだ。
自動車が故障してしまった主人公は、異星人の車の運転手に招かれ、車中に入る。だがその異星人は人類と見た目も性質も全く異なっていた……。

人間の困惑する声に性的ともいえる興奮を覚えるため、主人公は監禁され悪辣な扱いを受けるのだが、ある一言がきっかけで、異星人は怯えてコミュニケーションは失敗に終わってしまう。何だか狐に摘まれたような話だが、まあファーストコンタクトものと言っていいだろう。

ケイト・ウィルヘルム「アンナの手紙」(日本版オムニ1988年11月号/厚木淳訳)読んだ。
爆発事故に遭い、以後消息を絶った研究者の足どりを追うべく、筆跡鑑定士の主人公はある女性の手紙を読み解いていく。すると奇妙な事実が浮かび上がってきて……。

オチをちょっと割っちゃうことになるけど、まさかの時間SF的な決着! ヤング「たんぽぽ娘」的なやつですね。
若干必然性が弱い気がするが、女性の筆跡に引き込まれていく主人公の心理描写がサスペンスフルで巧み。

1988年のネビュラ賞受賞作。

【告知】次のSFマガジン(2月24日売り)にジョン・ウィズウェル「幽霊屋敷のオープンハウス」の翻訳が載ります!
2021年のネビュラ賞受賞作で、ヒューゴー・ローカス・世界幻想文学大賞にもそれぞれノミネート。めっちゃ評価高い作品です。
扉絵はYOUCHANさん。

筋書きとしては、前の住人の死から長年空き家になっていた屋敷でオープンハウスが行われ、そこに新しい家を探す父娘がやってくるのですが、そこは実は幽霊屋敷で……。という感じ。
とはいえホラーにはなりません。めっちゃいい話です。泣ける……かも。

ぜひご一読を〜!

京大SF研の会誌『WORKBOOK118 京フェス特集号』では、橋本輝幸さんとの講演者インタビューのほか、関連作品レビューとして鯨井の訳したM・ショウ「孤独の治療法」とジョン・スラデック『チク・タク×10』のレビューを掲載いただいてます。それぞれ書き手は昏月鯉影さん、茂木英世さんです。ありがとうございます!

BOOTHで通販もやっているようなのでぜひ。

booth.pm/ja/items/5235855

裏表紙もオマージュしてるのが並べるとよく分かりますね。デザインはBABELZINEも担当している南々蛸さん。

【お知らせ】11月11日の文学フリマ東京 にて、新刊『カモガワGブックスVol.4 特集:世界文学/奇想短編』を頒布します。A5版 152ページ、1500円。場所は「し-57 カモガワ編集室」。
そのほか既刊もあります。どうぞよろしく。

【お知らせ】今週土曜日の文学フリマ東京で、新刊『カモガワGブックスVol.4 特集:世界文学/奇想短編』を頒布します!

《池澤夏樹=個人編集 世界文学全集》全レビュー、伴名練によるコルタサル邦訳短篇集総解説、V・ウルフのエッセイ、ナボコフ・インタビュー、コーマック・マッカーシー全長編レビュー、カモガワ奇想短編グランプリ大賞&優秀賞作品など!

し-57 (第二展示場 Fホール)
1500円 152ページ

SFマガジン12月号の書評欄にて、渡辺英樹さんに拙訳 ジョン・スラデック『チク・タク×10』をご紹介いただきました。「翻訳が素晴らしい」とのお言葉も! ありがとうございます!!

10月7日付の毎日新聞書評欄にて、若島正先生に拙訳 ジョン・スラデック『チク・タク×10』(竹書房文庫)をご紹介いただきました。
ありがとうございます!

やりたい翻訳絡みの企画。レジュメ書きますんで、ちょっと興味のありそうな関係者各位はご連絡ください。

8月25日発売のSFマガジン10月号に、M・ショウ「孤独の治療法」の翻訳を載せていただいてます。
パンデミック下の孤独と狂気をテーマにした、植物ホラーSFです。
今回は作品のセレクト段階から一任という貴重な機会をいただけたので、自分好みの作品をノリノリで訳しました……! ぜひお読みいただけると幸いです。
コロナ絡みのパニックを経験した私たちにとって、きっと刺さるところの多い作品になっていると思います。

この題字や原題も含めたデザイン! 初のSFマガジンの短篇翻訳がこれでよかった。

東京創元社さまより献本拝受。『紙魚の手帖』vol.12 は夏のSF特集ということで、書き下ろし短編や翻訳、インタビューなどSF盛りだくさん。
鯨井は去年の8月頃から今年の初夏にかけて刊行された翻訳SFのレビューを担当しております。どんなセレクトかは読んでみてのお楽しみ。8月12日発売。

ジョン・スラデック『チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク』(竹書房文庫)、書影公開OKが出たのでアップします。
装画はGASさん、カバーデザインは坂野公一さんです。
8月末発売予定。

キム・スタンリー・ロビンスン「ラッキー・ストライク」(SFマガジン1996年9月号/後藤安彦訳)読んだ。
史実では広島に原子爆弾を投下したエノラ・ゲイが事故により大破し、代わりとしてラッキー・ストライク号が任務に当たることになった。爆撃手を命じられた主人公は、悪夢を見る。原子爆弾を投下されたあとの、地上の地獄のような惨劇を。
彼は機上で苦悶した末、投下のタイミングをずらしてしまう。原子爆弾は広島市街を逸れ、人のいない森へと落ちる。これがデモンストレーションとなり、原子爆弾は犠牲を出さないまま、戦争は終結へと向かう。しかし主人公は、反逆罪で銃殺刑を下される。
彼は、その後彼の名を冠する団体を中心とし、核廃絶を達成する未来を見ることのないまま、処刑されてしまう。だが、彼は間違いなく英雄となったのだ。

一種の改変歴史もの。ともすれば自己正当化されてしまいがちなアメリカの原子爆弾投下に対する価値観のなかで、一石を投じた反戦テーマの作品であり、この時期にこそ読まれるべき名作。

シャイニングのTシャツ(左)が金網に引っかかって破けたので、親に送って縫ってもらったのだが……。
送り返されてきたら双子が2ペアになって返ってきてビビったわよ。

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