李氏と筑摩の件で私がもっとも怒りを覚え、かつ絶望していることは、「監修協力者への確認を怠ったまま刊行した」という出版業の初歩中の初歩みたいな手続きの不備が根本原因となっている事態に対して、出版関係者のほとんどがなにも反応しないでいるということだったりする。
単にこんな事態が生じていることを知らないだけの者も多いだろうけど、「差別の話か......触らんとこ」となっていたり、ふだん差別や不正に厳しくあたっている者でも「宗教か......触らんとこ」となっているのであれば、それが「全容が掴めないうちは意思表示は慎重に」というものでないのならば、落胆するほかない。
これが大御所の作品に対する無断改変だったら、いまごろ大騒ぎ&タコ殴りに発展してるに違いないんだから。
「○○さん(大御所)の言うことは間違いない!」ってなってみんなで無断改変した作家と版元を批判するよね。もちろん不買もしたりするよね。そのやりかたがいいかどうかは場合によるが、そういう動きが見えない(そもそも話題にすらなってない)ことが、私には恐ろしいよ。
ようは
①「芥川賞作家」で「日頃から反差別をポリシーとしている」者だから
②「得体の知れない匿名の集団」で「宗教関係者」だから
が無自覚に組み合わさって「そんなことありえるの?(嘘ついてるとしたら後者だよね)」という判断になってるとしか思えず、なんかもううまく言い表せない感情になってしまう。