新しいものを表示

「野ばら姫」もしくは「眠れる森の美女」としてよく知られた童話。
その内部に農民の青年が入り込み(不遜にも〈侵入〉し)、でも姫の眠りの魔法を決して解くことなく、ただそこで長い時間を過ごす……。

……ル=グウィンの短篇選集から《The Poacher》を読んだ。
原著を電子で購入したので日本語版は手元にないが、調べると「狼藉者」「密猟者」が代表的な邦訳らしい。
これは、著者がS・T・ウォーナーの詩に影響を受け執筆した一編。

面白いのは、単なる童話の変奏ではなくて、その細部がかなり弄られていること。
ル=グウィン自身がエッセイ・対談集《Cheek by Jowl》の中で語ったように、この試み自体が狼藉であり愉楽なのだ。

数年がかりで茨の垣根を超えた青年は、眠りの城で「野ばら姫(眠れる森の美女)」に相当する物語を発見して読み、自分が今まさに何の魔法を目撃しているのか知る。
これはかなり外部的な視点で、ある物語の内部に入り込んだ人間が、その内部にいながら元ネタの物語を読む……という構造には作為がある。

しかもこの短編《The Poacher》自体が、おそらく読者に向けた手記の体裁を取っているのだった。
示唆的で色々な捉え方ができ、また別途感想をまとめる予定。
おすすめ。

そもそも「『建物好き』として通い始めた」って何?
……の部分を補足します!

横浜のホテルニューグランド、本館の方は昭和2(1927)年に開業した際のもので、近代化産業遺産に指定されています。
私は明治・大正・昭和初期のたてもの を愛好していて時々ぶらぶら国内を巡っており、その一環でこちらのニューグランドを訪れたり宿泊したりもしていました。

設計者は渡辺仁。
あの東京銀座にある「和光本店(交差点にある時計が目印の建築物)」や、もう閉館してしまいましたが「原美術館」なども彼の設計です。

本館のみどころのひとつはやはり大階段周辺。

上った先にはエレベーターの扉と、盤面の周囲に美しい石の彫刻が施された時計がある。壁の画は川島甚兵衛が製作した綴織だった。
階段の手すりはスクラッチタイルを思わせる風合いで、昭和初期に竣工した建物にはよく見られるものであることから、当時流行のモダンな意匠を積極的に取り入れていたのかな……とも思う。

全体的に洋風の雰囲気が漂うが、釣り灯籠風の照明や壁画など細部に目を凝らすとわかるとおり、東洋の細工もふんだんに取り入れられているのだった。
それが独特の華やかさと居心地の良さを生んでいるのだろう。
梁に施された文様の良さ。


スレッドを表示

8月31日㈭までのサマーアフタヌーンティー期間中、限定でオリジナルブレンドのアイスティーが提供されるというので久しぶりにニューグランドへ。ロビーのラ・テラス。
実は「建物好き」として通い始めたのがきっかけですが、地元住民の贔屓目もありつつやっぱりここ好きです。

おかわり自由、日本紅茶協会の「おいしい店」認定店にも名を連ねていておすすめ。
もちろん、リストに載っていなくたっておいしいお店も沢山あると思いますけど、迷った時に選択の参考として……
tea-a.gr.jp/shop/

さて、どうせならスタンダード&フレーバーを制覇しよう、ということで
・ダージリン
・アッサム
・ディンブラ
・ウバ
・アップルクイーン
・アールグレイ
・オリジナルブレンド
……をどんどんおかわりしていきました!!
〈強欲〉とはまさにこのこと

これまできちんとウバ紅茶の特徴を味わったことがなく、メントール系ともいわれる爽快感のある後味ってどんなものなのだろう、とドキドキして飲んだら本当に爽やかで美味だった。

またスコーンはパイナップル風味で、クロテッドクリームと一緒についてくるのもパイナップルジャム。
甘酸っぱくて夏を感じる仕様。


耳は聞こえるが声を発することができぬ唖者のため、手話を用いて意思の疎通を行う《図書館の魔女》マツリカ。
そして、常人よりはるかに鋭敏な感覚を持っているものの、文字の読み書きができないキリヒト。

ある思惑によって邂逅した2人は、やがて「新しい手話」を編み出そうと模索する。

『──音声も文字も言葉の最後の拠り所ではない。
 そのどちらにも拠らず、なお言葉たりうる表現手段はいくらもあるんだから。
 ただね、単なる叫びとは異なる、象徴的な記号や図絵とは異なる、真に言葉といえるものなら必ず持っている性質が少なくとも二つある』
(高田大介「 第一巻 (講談社文庫)」p.105 Kindle版)

……ファンタジー好きとしては所々に「あああそこは惜しいな~」と思える要素が散見されたのが玉に瑕だったけれど、内容が面白いのには疑いがない。

多分、合う人には合うし、合わない人には合わないはず。
1の言葉で100を想像させる表現があるとするなら、まさにこれはその対極に位置している……と思った。
描写、描写、描写、とにかく描写、描写が延々と続く中に、確かな悦楽がある。
まるで、言葉は決して単なる道具などではない、そう「ここでは言葉そのものが世界なのだ」と言わんばかりの圧。

Fedibird

様々な目的に使える、日本の汎用マストドンサーバーです。安定した利用環境と、多数の独自機能を提供しています。