「野ばら姫」もしくは「眠れる森の美女」としてよく知られた童話。
その内部に農民の青年が入り込み(不遜にも〈侵入〉し)、でも姫の眠りの魔法を決して解くことなく、ただそこで長い時間を過ごす……。
……ル=グウィンの短篇選集から《The Poacher》を読んだ。
原著を電子で購入したので日本語版は手元にないが、調べると「狼藉者」「密猟者」が代表的な邦訳らしい。
これは、著者がS・T・ウォーナーの詩に影響を受け執筆した一編。
面白いのは、単なる童話の変奏ではなくて、その細部がかなり弄られていること。
ル=グウィン自身がエッセイ・対談集《Cheek by Jowl》の中で語ったように、この試み自体が狼藉であり愉楽なのだ。
数年がかりで茨の垣根を超えた青年は、眠りの城で「野ばら姫(眠れる森の美女)」に相当する物語を発見して読み、自分が今まさに何の魔法を目撃しているのか知る。
これはかなり外部的な視点で、ある物語の内部に入り込んだ人間が、その内部にいながら元ネタの物語を読む……という構造には作為がある。
しかもこの短編《The Poacher》自体が、おそらく読者に向けた手記の体裁を取っているのだった。
示唆的で色々な捉え方ができ、また別途感想をまとめる予定。
おすすめ。