「喪われた感情のしずく」面白かったです。
“感情を制御する”話は前例が多々ありますが、そもそもの「感情」に対する考察・検討が甘くてケチが付くことが多く、一方で本作は、感情の身体性に着目したところに新味と説得力がありました。
展開でいうと、中盤のツイスト、クライマックス手前の世界認識をひっくり返すツイスト、どちらも言われてみればそうだが言われてみないとわからない、そういう捻りで面白かったです。読者(おれ)よりもこの世界のことを考えている作者の掌で転がされるのは楽しい!
終盤で、劇中で投げた問いに誠実に答えているのも、バチッと着地が決まっていて凄くよかったです。
個人的には、「母」のエピソードが私的に抱えているモチーフに非常に近くて、それもよかったですね。
【お知らせ】
第15回創元SF短編賞受賞作「喪われた感情のしずく」が、『紙魚の手帖 vol.18』に掲載されています。
うなじの金属製の孔に一滴垂らし、人工の感情を身にまとうコスメティック〈オーデモシオン〉にまつわるお話です。よろしくお願いいたします!
https://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488031237
『紙魚の手帖 vol.18』ですが、在庫検索してみると、すでに並んでいる書店もあるようです。電子版は8/16に配信とのこと。
また、短編単体の電子書籍も8/16配信です。植田たてりさんに素敵な表紙を描いていただきました(紙魚の手帖 vol.18にも扉絵として掲載されています)。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DCGS15XM/
『紙魚の手帖 vol.18』に掲載されている第15回創元SF短編賞の選評と、稲田一声「喪われた感情のしずく」の序盤が、こちらで試し読みできるみたいです。
https://www.yondemill.jp/contents/64275
作家(阿部登龍)。第14回創元SF短編賞受賞作「竜と沈黙する銀河」(紙魚の手帖vol.12)、「狼を装う」(同vol.18)。SFとファンタジーと百合とドラゴンとメギド72が好き。
お仕事のご依頼は東京創元社までどうぞ。
通販 http://abe-dragonslay.booth.pm