ビル・ゲイツが慈善活動にお金を出すのは良いことだが、自分のやり方を押しつけ数字で管理したがり、現地のニーズを聴く姿勢が乏しいと批判されている。 例えば、人口問題への取り組みで女性向けの「皮下に埋め込む避妊用インプラント」にこだわった。解除するには外科手術で取り出す必要があり、自己決定権の観点から避けたい人もいる。
(話は変わるが「慈善団体に就職するより高収入の職について積極敵に寄付しよう」と呼びかける「効果的な利他主義(EA)」コミュニティも危うい)
ビル・ゲイツは、いわば啓蒙専制君主のような存在で、まだマシな方だ。より若い世代のテック富豪はもっと危ない独裁者だ。例えばイーロン・マスク、ピーター・ティール、マーク・ザッカーバーグ、マーク・アンドリーセン。OpenAIのサム・アルトマンや、FTX創業者で金融犯罪で長期刑が予想されるサム・バンクマン=フリードも同類だ。
加速主義、長期主義、アイン・ランド、ニーチェが人気。ピンカーのいう"19世紀ロマン主義的"誇大妄想に取り憑かれた人々だ。
かれらテック富豪に共通する「気分」については記事で触れた。
OpenAI内紛劇の背後に「21世紀の優生思想」、EAコミュニティとe/accの危険性
https://globe.asahi.com/article/15087941
補足:富の一部を慈善活動に投じていたテック富豪は、具体的にはサム・バンクマン=フリードを指す。
(ちなみに、楽天の三木谷浩史会長兼社長も、フルブライト・プログラムに9000万円、ウクライナに10億円を寄付)
サム・バンクマン=フリードは、イーロン・マスクに話しかけて慈善活動に協力してもらおうとしいたが、あまり関心をもってもらえなかったそうだ。イーロン・マスクは慈善活動には関心が薄いと思われる。
イーロン・マスクは、自分の資産を慈善活動に振り向けるのではなく、「人類を火星に植民できるようにする」方向に投資することにより「人類絶滅の可能性を減らす」ことが良いことだと考えている。この考え方は「長期主義」と位置づけられる。問題のひとつは、こうした判断がイーロン・マスクという独裁者の気分ひとつで下されること。
税金を払い民主主義に基づき分配する仕組みを軽蔑し、「資本主義の成功者である自分の方が良い判断を下せる」と考えることが、テック富豪らの共通点のひとつ。
啓蒙専制君主的なビル・ゲイツも、横暴な独裁者のイーロン・マスクら若い世代も、共通点は「認識の痛みを回避したがる」こと。
白人男性の優位、富の不平等、そうした自分自身の存在を脅かす「気分が良くならない」疑問はスルーし、富の一部を慈善活動に投じ、自らの価値観を変えない「気分が良くなる」方向性を目指す。
本当の「現代の啓蒙」とは、男性中心・西洋中心の思考から脱却する痛みを共有することだろう。現代の社会には、思考のフレームワークを取り替えなければ解決できない問題群が数多くある。
だが、白人男性テック富豪がこの思考を共有することは、まだまだ難しそうだ。