「子供のころから、虫をつかまえたり小さなサメ(dogfish)を解剖するのがすきだったタルコットは、[アマースト]大学に入学するや、生物学を専攻した。…兄チャールズの影響もあって、将来生物学の大学院にすすむか、医師になろうと考えていたからである。…生物学を主専攻としたタルコットは、優秀な成績をあげ、アマーストの奨学金をえて、海洋生物の研究をすすめるため、マサチューセッツ南東部の海岸都市ファルマスFalmouthにあるウッズ・ホール研究所(Woods Hole Laboratory)にかよって、実験にせいをだした。同時に彼は、『生物進化』のコースの実験助手も務めることとなった」36-7頁
高城和義(1992)『パーソンズとアメリカ知識社会』岩波書店
「<秩序性を生み出す2つの道>
…そもそも秩序正しい事象を生み出すことのできる『仕掛け』には、2通りの異なるものがあるように思われます。すなわちその一つは『統計的な仕掛け』であって、これは『無秩序から秩序』を生み出すものです。もう一つの新しいものは『秩序から秩序』を生み出すものです。…生きているものの最も著しい特徴は明らかにかなりの程度まで『秩序から秩序へ』の原理に基づいている…
…一口にいえば、純粋に機械的な現象はすべてはっきりとしかも直接に『秩序から秩序へ』の原理に従っているように見えます。そしてこの場合、『機械的』という言葉は広い意味にとらなければなりません。…
…生命を理解するには、生命は一つの純粋な機械的仕掛けすなわちプランクの論文で用いられている意味での『時計仕掛け』に基づいているということが手掛かりとなる」159・161-2頁
「それ[生物体]を操るものはきわめて高度の秩序を具えた一団の原子であり、しかもその原子団はどの細胞の中でもその細胞全体の中でのごく小部分を占めているにすぎないものだということがわかります。そればかりでなく、突然変異のしくみについて考えてきたところから、生殖細胞の『支配的原子団』の中でほんの少数の原子が位置を転ずるだけでも、生物体の目で見える程度の遺伝的特徴にはっきりとした変化を起こさせるに十分である…
…生物体が『秩序の流れ』を自分自身に集中させることによって、崩壊して原子的な混沌状態になってゆくのを免れるという生物体に具わった驚くべき天賦の能力、すなわち適当な環境の中から『秩序を吸い込む』という天分は、『非周期性固体』と呼ぶべき染色体の存在と切り離せない結びつきがあるように思われます」152-3頁
「<生物体は環境から『秩序』をひき出すことにより維持されている>
…『生物体は負エントロピーを食べて生きている』、すなわち、いわば負エントロピーの流れを吸い込んで、自分の身体が生きていることによってつくり出すエントロピーの増加を相殺し、生物体自身を定常的なかなり低いエントロピーの水準に保っている…
Dが無秩序の目安となる量だとすれば、その逆数1/Dは秩序の大小を直接表わす量だと考えられます。…
−(エントロピー)=k log(1/D)
…『エントロピーは負の符号をつければ、それ自身秩序の大小の目安となる』…生物が自分の身体を常に一定のかなり高い水準の秩序状態(かなり低いエントロピーの水準)に維持している仕掛けの本質は、実はその環境から秩序というものを絶えず吸い取ることにあります。…植物は『負エントロピー』を与える最大の供給源を太陽の光に求めます」145-6頁
「エントロピー=k logD
この式でkはいわゆるボルツマン定数(=3.2983×10^-24 cal/℃)であり、Dは問題にしている物体の原子的な無秩序さの程度を示す目安となる量です。このDという量を簡単に専門的な術語を使わずに説明することはほとんど不可能です。このDの示す無秩序は、一部分は熱運動の無秩序であり、一部分は、異なる種類の原子または分子がきちんと別々に分離していないで…混ぜ合わされていることに由来する無秩序です。…
…エントロピー増大という物理学の基礎的法則は、ものごとは、人がそれを防がない限り自然に混乱状態へと近づいてゆく傾向をもっていることに他ならない」143-5頁
社会学と誤用進化論😅を中心に読書記録をしてをります
(今はストーン『家族・性・結婚の社会史』1977年)
背景写真はボルネオのジャングルで見た野生のメガネザル
https://researchmap.jp/MasatoOnoue/