「フェミニズムとマチズム
兄弟間の非対称性原理は男と女の関係に影響を及ぼし、絶対核家族モデルと平等主義核家族モデルでは関係のタイプが異なることになる。
核家族はその2つの変種ともに、双系制システムに属しており、父系親族と母系親族に同等の価値を付与するものとなっている。…逆説的なことに、対称性に関心を持たない絶対核家族の方が、『平等主義』家族よりも両性間の平等をより深く実践しているのである。兄弟間の対称性原理は、男性の連帯をア・プリオリに前提とするものなのだ。それがすべての社会で自然なものとなっている両性間の不平等をさらに強化するのである。
絶対核家族は反対に、兄弟の平等や男性の連帯を意に介さないのである。それは夫婦の絆をもっとも徹底した——平等主義的な——帰結にまで発展させることで、アングロ・サクソン諸国の人類学システムを地球上に現存するもっとも女性主義的なシステムにしている。
絶対核家族は、内部に矛盾を孕まない安定した構造である。平等主義核家族は、<夫婦の連帯>の原理と<両性の不平等>の原理との間の矛盾を抱えている。この家族構造は、双系制の核家族システムのなかで男性の優位を肯定するラテン諸国のマチズムに至りつく」178-9頁
「平等主義的な核家族構造の地域に位置する首都や大都市は、しばしば共産主義の実体ある定着の場となっている。1921年からのパリがその例であり、今日ではアテネがそれに当たる。しかし根無し草化の影響であるこのような政治的な地理分布は、過渡的なものである。…都市化のプロセスがいったん完了すると、住民の安定化に伴なって共産主義的な受け入れの構造が必要なくなるのである。パリの場合、この増加したあと減少するという動きが自殺と共産主義の動きにおいて平行したものとなっているのである。これらの動きは1世代の間隔をおいて反復されている。自殺は1945年から減少し、フランス共産党は1978年から崩れはじめたのだ」167-8頁
「私生児であること、つまり結婚外の子供(フランス語では自然児と呼ばれる)の妊娠は、外婚制メカニズムにとってほとんど避けることのできない相関的な現象である。家族集団の外部に配偶者を探すということは、偶然的な出会いを前提としているとともに、女性の性の管理が或る程度緩くなることを意味している。内婚制システムについての信頼できる数字は存在しないが、いくつかの調査の結果を見る限り、選好婚モデルでは私生児という原理そのものが排除されていることを示唆するものとなっている。イスラム諸国に関する現存するデータによると、私生児の誕生は0%から0.1%の間で揺れるきわめて僅かな割合に止まっている」151頁
「非常に高い結婚年齢は、共同体家族では許容できない。規模の大きい複合家族が形成されるためには、世代の間隔が小さいか中位であることが前提となるため、晩婚は論理的にそれを不可能にするのである。共同体家族の理念的な形態は、両親の存命中に少なくともふたりの兄弟が結婚することであり、比較的速やかな世代の交代が前提となる。
その縦型の理念的形態からすれば、権威主義家族はひとりの息子もしくはひとりの娘の結婚だけを前提とするのである。したがって世代間の年齢の隔たりが大きくなっても許容されるのである。しかしその組織は、核家族のそれとは反対に、非常に低年齢での結婚も許容できる。その場合、若夫婦は成人である両親の管理と保護のもとに留まるのである。したがって権威主義家族は実際には、あらゆる結婚年齢と呼応するのである。
現存する資料をみれば、実際に権威主義家族が他の人類学モデルよりも幅広い年齢層に対応していることが分かる」142頁
社会学と誤用進化論😅を中心に読書記録をしてをります
(今はストーン『家族・性・結婚の社会史』1977年)
背景写真はボルネオのジャングルで見た野生のメガネザル
https://researchmap.jp/MasatoOnoue/