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「『内的環境』の恒常性…
 われわれのからだの構造と化学的組成のもっともいちじるしい、当然強調さるべき特徴の一つは…それらが本来きわめて不安定であるということである。循環系の調和のとれた働きがほんのわずか狂っても、からだの構造の一部は完全に破壊され、みごとに構成されたからだ全体の存在が危険にさらされる。
 多くの実例で、われわれはしばしば、そのような不測の事態が起こることを知ると同時に、不測の事態が生じても、考えられるような悲惨な結果に終わることがいかにまれであるかも知った。
 原則として、生物に有害な影響をおよぼす条件があればいつでも、生物そのもののなかにそれを防ぎ、乱された均衡を回復する要因があらわれる。この安定性をもたらす仕組みの<型>が、われわれの現在の興味の中心なのである。
 ある種の器官は、その作用が速すぎたり遅すぎたりしないよう、一種の調節作用に支配されているが——抑制神経と促進神経を持つ心臓は一つの例である——このような例は、自己調節作用の二次的、補助的な形態であると考えることができる」301-2頁→

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「私はクロード・ベルナールの考えにしたがって、われわれはまわりを取り囲んでいる大気のなかに生存しているのではないことを強調した。われわれは、死んだ細胞や粘液や塩溶液の層で大気から隔てられている。これら生命のない物質の表層のなかで生きているすべてのものは、液質、血液やリンパ液に浸されている。すなわち、これら液質は、内部環境を作っているのである。
 内部環境あるいはからだを満たす液質が、いちじるしく変化したときに生ずるひどい危険を見れば、それを安定に保つことがいかに重要なものであるかはっきりと知ることができる。クロード・ベルナールは、安定性の維持が、自由で妨げられない生活の条件であることを明白に認識した。
 われわれは、からだの内部に環境を備えて、行動するのである。そのため、われわれの身の回りに起こる、たとえば、温度変化、湿度、酸素含有量の変化も、極端でないかぎり、われわれの生命を包んでいる内部環境にはほとんど影響を及ぼさない。
 しかし、この快適な安定性、恒常性も、ふだんいつも破局を防ぐべく待機しているすばらしい仕組みの働きなしには、保証されない。そのままにしておけば、たちまち生物に深刻な悪影響を与えるような条件が、からだの内部に生まれるだろう」281-2頁

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「生物が応じなければならない本質的な問題、生存と種の繁栄の問題」265頁

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「からだの内外から加わる有害な影響に抗して安定性を維持するための目ざましい仕組み…野獣や顕微鏡的な細菌に対して、からだの全体性を守っているすばらしい備え…構造の強度や作用の能力には、平生必要とされる以上に、ひじょうに余裕のある安全性の幅が与えられている」260頁

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「文明社会の人々が、体温の恒常性を保つための生理的な機構に無神経な干渉を加えているにもかかわらず、そのような機構は存在しており、いつでも作用できるよう準備されている。
 生物を一つの方向に押しやろうとする傾向がある条件では、そうした傾向に反発する一連の作用がただちに働かされる。さらに、反発する傾向が強まれば、他の一組の作用がすみやかにそれに抵抗する。こうして、まったく自動的に、からだの内外にある不利な条件に抗して、内部環境の驚くべき一様性が保たれるのである」227頁

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「平均的な状態からはなはだしくはずれて変動が起こり、細胞の機能をそこない、生物の存在をおびやかすような危険な状態になることは、めったにない。そのような極端なことが起こるまえに、かき乱された状態をふだんの位置にまでひき戻す作用が、自動的に働き始めるのである」45頁

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ベルナール「『内部環境』の不動性こそ、自由で独立した生存の条件であり、生命を維持するに必要な機構はすべて、それらがいかに変異に富んでいようとも、ただ一つの目的を有している。すなわち内部の環境に、生存のための条件を一定に保つことである」43頁

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「からだのなかに安定した状態を作り出し、それを保つうえにきわめて大切な働きをしているのが、からだの内部環境すなわち、われわれがからだを満たす液質 fluid matrixと呼んでいるものであることを最初に取りあげたのは、偉大なフランスの生理学者、クロード・ベルナール…であった。すでに、1859年から60年にかけて、ベルナールはその講義のなかで、複雑な生物には2つの環境——一つは、無生物にとってのものと同じもので、生物全体を取り囲んでいる一般的な環境であり、他の一つは、からだを作っている要素にもっとも適当な生存条件を与える、からだの内部にある環境——があることを指摘している」42頁

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(承前)「比較して研究してみれば、すべての複雑な組織だった系が、多かれ少なかれ効果的な自動的な補償機構を持っており、組織にひずみが生じたときにその機能が止まったり、その部分が急速に分解するのを防いでいることが、きっと明らかになるだろう。そして、複雑な生物で用いられている、このような自動的な補償方法を充分に調べてみれば、まだ有効に作用していないか、不充分な働きしかしていない方法を改良し、完全なものにするための糸口がえられることと思われる」28頁

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「からだのなかに保たれている恒常的な状態は、<平衡状態>と呼んでもよいかもしれない。しかしこの用語は、既知の力が平衡を保っている比較的簡単な、物理化学的な状態、すなわち、閉鎖系に用いられて、かなり正確な意味を持つようになっている。
 生体のなかで、安定した状態の主要な部分を保つ働きをしている、相互に関連した生理学的な作用は、ひじょうに複雑であり、また独特なものなので——それらのなかには、脳とか神経とか心臓、肺、腎臓、脾臓が含まれ、すべてが協同してその作用を営んでいる——私はこのような状態に対して恒常状態(ホメオステーシス homeostasis)という特別の用語を用いることを提案してきた。
 この用語は、固定し動かないもの、停滞した状態を意味するものではない。それは、ある状態——変化はするが相対的に定常的な状態——を意味するものである。
 高度に進化した動物が、その内部の状態を一定の安定した状態(すなわち、恒常状態)に保つために用いている方法は、安定した状態を確立し、調節し、支配するためのある一般的な原理を示しており、不安な変動に悩む他の組織——社会的、産業的なものであっても——にとっても、役立つ可能性があるかもしれない」28頁→

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「からだにおける恒常性の維持(ホメオステーシス)
…われわれのからだを造りあげている不安定な素材が、とにかく安定性を維持する方法を習得した…この『習得する』という言葉を使うことは不適当なことではない。外界の条件が広く変化しても、安定な状態を維持する過程を完成したのは、なにも高等な動物にだけ特別の恩恵が与えられていたからではなく、段階的な進化の結果である」26頁

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「外界の変化によってひき起こされる変化に対する抵抗性だけが、適応し安定性をもたらす仕組みの証拠ではない。からだの内部から生まれる不調和に対する抵抗性も存在している。…
 簡単にいえば、充分な備えを持った生物のからだ——たとえば哺乳動物——は、外界の危険な状況や体内の同じように危険な可能性に直面して、しかも生きつづけ、比較的わずかの障害に止めてその機能を継続しているのである」25-6頁

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「このうえもなく不安定で、変わりやすいという特徴を持つ材料で作られている生物は、なかとかその恒常性を保ち、当然生物に深刻な悪影響を及ぼすと思われる状況のなかで不変性を維持し、安定を保つ方法を習得している」24-5頁

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シャルル・リシェ(1900年)「ある意味では、生物は、変化しうるがゆえに安定なのである——なにほどかの不安定性は、個体の真の安定性のための必要条件である」24頁

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「自然治癒力
 生物が、自身のからだをつねに一定の状態に保つ能力は、長いあいだ生物学者たちに強い印象を与えてきた。病気が、体に備わる自然の力、『自然治癒力』でなおるのだという考えは、すでにヒッポクラテス…が抱いていたものだが、この考えのなかには生物の正常の状態がかき乱されたときに、ただちに作用してそれをもとの状態に戻すたくさんの力があることが示されている」23頁

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「われわれのからだの構造がきわめて不安定であること、きわめてわずかな外力の変化にも反応すること、そして、好適な環境条件が失われたときに、その分解がすみやかに始まることを考えると、それが何十年にもわたって存在しつづけることは、ほとんど奇跡的なことであるように思われる。
 この驚きは、からだが外界と自由な交換をしている開放的な系であり、構造そのものは永久的なものではなく、つねに消耗され破壊され、修復の過程によって絶えず築き直されているのだということを知ったとき、さらに強いものになる」22-3頁

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Cannon, Walter B. (1932) The Wisdom of the Body, Norton.
=1981 舘鄰・舘澄江訳『からだの知恵——この不思議なはたらき』講談社学術文庫

訳者名が難しくて、「舘」は「たちひろし」ですぐ出ましたけど😅、「鄰」は「ちかし」と打っても出てくるわけなく、「りん」の下の方を探したらありました!!(Amazonでは左右入れ替わって普通の「隣」になってます😅)

訳者あとがき「ウィーナーの見解は、量子力学で公認のハイゼンベルクの不確定性原理に基づく不確定性と、物理・生物・社会現象の巨視的観測の不可避的非精密性とを混同して統計という観点から一元化しようとしている傾向がみられるが、現代物理学の最新の進歩は、本書にも若干言及されている彼の構想を、量子力学に対する無理解からくるといって否定しきれない段階に達しつつあるように思われる。他方、遺伝学に対しては、彼は直接には本書と『人間機械論』でちょっとふれているだけだが、本書からもわかるように、親友J. B. S. ホールデンの影響が大きいようで、いわば正統派である。異端のルイセンコとウィーナーの見解のちがいは極めて深刻であると同時に。サイバネティックスは遺伝子遺伝学を根本的に乗り越える可能性を蔵していることが本書からもうかがえる。…
 訳者あとがきに乗じて著者に対して一見不遜な言辞を弄したが…」😅 267-8頁

この箇所以外にも、「小心翼々たる凡俗なサラリーマンの人生」「決して新奇ではない凡俗な科学思想」など、びっくりするほど辛口な訳者あとがきでした😅😅😅

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「一部は父自身のものの見方により、一部は父が私にほどこしたしつけによって、私は理論的なものと実際的なものとを非常によく結びつけて考える力を与えられた。父は言語学者だったが、いろいろな言語の発達は、互いにほとんど隔離された生物が生長してゆくような形のものではなく、歴史的ないろいろの力の相互作用の一つの現われであると考えていた。彼にとっては、言語学は文化史を研究する一つの道具にすぎず、ちょうど鍬が考古学者にとって道具であるのと同じようなものだった。言語学の研究をやっても形式的なものや抽象的なものでは満足できなかった父の息子であってみれば、私が物理学に真に触れあったことのない数学者に特有な薄っぺらな数学観では満足できないのも少しもふしぎではない」256頁

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「私はキールケゴールとその感化をうけた著作者たちのペシミズムに積極的な或るものを加えることができたと思う。それらの著作者たちの中で、もっとも重要なのは実存主義者である。私は、生存の陰うつを、決してポリアンナ的(盲目的)な楽天主義の哲学によって置換えたりはしなかった。だが少くとも私は、実存主義の諸前提とかけはなれてはいない私の前提が、宇宙とその中でのわれわれの人生とに対する肯定的な態度と矛盾しないことを確信してきた」234頁

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