『告白 コンフェッション』原作読んだ上での感想
上映時間74分だし、石倉が韓国人のジヨンに変わっている以外は大体原作まんまなのかなーと思っていたけど、覚えてる範囲でもエピソードが一つ削られてるのと終盤の展開は割と違った。
友達という対等であることが望ましい関係性の2者間で情報・感情・身体の様々な不均衡が積み方なっていくことで緊張感が高まっていくのはやはりすごく面白いし、相手の姿が見えている/見えていないという状態がダイレクトにそのパワーバランスに寄与するのは、映像化した意味があって良かった。
その点では、韓国人への設定変更は言語の壁という大きな情報の不均衡ができるので納得感ある改変だったかなと思う。
ただ、ジヨンの行動の見せ方が浅井寄りの目線であるとはいえあまりにもホラーすぎるし、最終的に浅井の方が悪いことしてましたとなった後で夢オチ×2みたいな感じになるのが反転がぼんやりしてしまう気がしてうーんとなった。
『バジーノイズ』人と関わらず孤独にDTMに打ち込む清澄が、同じ団地の住人・潮と出会ったことでミュージシャンとして人や社会との関わりが広がっていくという話
清澄の作る音楽が、最初は環境音を取り込んだ打ち込みのローファイミュージックだったのが、人間関係が広がるにつれベースやドラムが入って音色が広がったり、逆に感情を失った作曲マシーンと化した終盤ではつまらない打ち込み音楽になっていたり音楽の作り込みが作劇に生かされてたのが良かったです。あと、打ち込みをバンドサウンドでやるのガチアンチ人間としては、終盤で人に提供した曲がライブでバンドアレンジの更につまらない曲になっていたのがぐっと来ました。
(そもそも清澄の作ってる曲がlofi hip hop radioというかサクラチルビーツ過ぎてこれ売れるんですかねというのはあるんですが…)
そして、潮がマニック・ピクシー・ドリーム・ガールすぎるのでは〜〜と思っていたところにきちんとその回答があったり、高低差の活かし方とか、風間太樹監督作初めて見るけどたしかにそつなく上手いなと思いました。
『ありふれた教室』頻発する窃盗事件が問題となっているドイツの中学校で、新任の教師が生徒への疑いを晴らすために取った行動が予想外の波紋を広げていくというあらすじ。
舞台となっている学校がゼロ・トレランス方式を導入している(ドイツには公立校への導入が定められている州があるらしい)ので、窃盗事件の捜査が結構えげつない。男子生徒だけ教室に残して財布の中身を確認するとか、生徒を教師が取り囲んでチクリを強要したりとか、人権侵害の区域まで踏み込んだ犯人探しがされている。しかも万が一窃盗犯とみなされた場合のペナルティもその後の人生に影響を及ぼしかねないくらい重い可能性がある。そんな状況で自分の生徒が疑われていたら疑いを晴らしたくなるのが人情というもので、主人公は犯行の瞬間を捉えようと盗撮を試みます。結果として犯行の瞬間らしきものは撮れるんですが、その行動によって主人公がどんどん追い詰められることになっていきます。
「子供には学校と家しか居場所がないから追い詰められやすい」みたいなことがよく言われますが、この映画は学校以外の場所での出来事を一切映さないことで、主人公の逃げ場所のなさが強調されているのがいいなと思いました。
また、同僚との会話や授業のシーンなどちょっとした場面にも緊張感があって良かったです。
『パリ、テキサス』40年前の映画にどうこう言っても仕方ない話ではあるけど、主人公のやってることが今の価値観だとひどすぎてびびった。でも、今まで他のヴィム・ヴェンダース作品見てて「これどういうアングルでこの描写入れてんのかな」と思ってたことへの理解度は上がったので見てよかった。
ANORAパルムドール受賞したし、早めに日本公開されるかな……
『胸騒ぎ』デンマーク人の一家が旅行先のイタリアで知り合ったオランダ人一家の自宅に招待される。週末を過ごすうちに違和感が積み重なっていき、という話。中盤までのオランダ人一家の絶妙な嫌な感じが積み上がっていく感じはすごく良い。
子供もいてイタリアにバケーションに行く経済的な余裕もあってベジタリアンにも理解を示すこの一家は自分たちと同質性が高いはずだという先入観だったり、デンマーク人家族の夫の事なかれ主義感だったり、まぁこっちに全く落ち度が無いわけではないしみたいな引け目によって逃げるチャンスを何度も逃し、引き返せない状況になってしまう、いわゆるゆでガエル的状況までに持っていくまでがすごく丁寧だし、冷え冷えとしたショットもかっこいい。
なんだけど、終盤でことが決定的になってしまってからが結構ご都合ぽいというかちょっと雑な感じがして少し心が冷めてしまった。まぁもう事態は決してるし、これ以上こねくり回しても仕方ないでしょってことなのかもしれないけど…。