「第1次人口転換と近代家族を単位とする『第1の近代』を作り、第2次人口転換と脱主婦化が個人化と家族の多様化を特徴とする『第2の近代』を開始させた」533頁
「近代の家族変動と社会変動をとらえるための理論的基礎は人口転換(demographic transition)とジェンダーであるべきだと考えている。…産業革命が『物の(生産の)近代』を出現させたとすれば、『人の(再生産の)近代』を生み出したのは人口転換であった…
人口転換は、近代家族の成立を可能にする条件を生み出した。…近代家族の子ども中心主義という心性のいわば人口学的下部構造である。
…人生の安定性と予測可能性が高まり、家族経験の同質性が高まったとマイケル・アンダーソンは言う…
…筆者[落合恵美子]が『社会の中にいくつかある家族類型のひとつ』でしかなかった『19世紀近代家族』と、『社会のどの位置にいる人にとっても、同型的な家族が成立しているはずだということを前提としている』『20世紀近代家族』を区別…山田昌弘も実態レベル(実際の家族が近代家族の性質を備えている)と制度レベル(社会が近代家族を前提として構成されている)を区別して、前者を『近代家族』、後者を『近代家族システム』と呼んでいる…人口転換は制度レベルでの『近代家族システム』の成立を可能にした」534-5頁
「家族の社会史の領域では、アリエスの流れを汲む心性史に替わって、洗練された科学的な手法を用いる歴史人口学が主流となった。近代への移行という大きな絵を描くより、前近代社会のメカニズムの解明が中心的な関心となった。…欧米圏の研究において『近代家族』という概念化が後景に退いた理由は、学説史的偶然と、社会的現実の変化との、両方と言えるだろう」534頁