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【ほぼ百字小説】(4918) 棄てられたものを積み上げて作った土地で、棄てられたものを使って世界を作り直そうと思ったのに、結局は棄てられたものに棄てられることになるとはね、と棄てられたものに棄てられたものが棄てられる前に棄て台詞。

【ほぼ百字小説】(4917) 勘違いしている人が多いが、地獄というのは人にモラルを守らせるために存在しているのではなく、ただ存在するために存在している。つまり、燃料として地獄に落とされる者が多ければ多いほど、地獄には好都合なのだ。

【ほぼ百字小説】(4916) 今日も今日とて地獄は満杯、それでも減らない地獄行き、地獄は連日大混雑だが、それも責め苦のひとつになって、地獄はますます地獄らしく、そんな地獄の好循環を維持するためにも伏せておけ、地獄が実在することは。

【ほぼ百字小説】(4915) 山裾に広がるあの墓地は、ぼくたちにとっては石の巨大立体迷路で、鬼ごっこやかくれんぼには最適の遊び場だった。わざわざ待ち合わせたりしなくても、いつも誰かがそこにいた。大人になった今も、たまに会いに行く。

【ほぼ百字小説】(4914) 突っ立っているだけと思ったら、通りかかるたびに身体の向きが違っていて、そうだとわかった。抜けると近道になる公園の林の中、木々の間にその人が見える。一日一回転。最近は顔が見える時刻に通るようにしている。

【ほぼ百字小説】(4912) 冷蔵庫が去る日が来た。今年はなかなか冬が来ず、来たと思ってもまた暑くなったりで紛らわしかったが、もう室温でも大丈夫だろう。冷蔵庫から這い出して部屋のドアを開け、去りゆく冷蔵庫を見送る。また春に会おう。

【ほぼ百字小説】(4911) たまに狸と入れ替わる。狸でいるのも悪くはないが、それはいつでも戻れるからで、いろいろ恋しくなってきて、狸でいるのが寂しくなると、狸を呼び出し入れ替わる。狸にしても同じらしく、待ってましたと入れ替わる。

【ほぼ百字小説】(4900) 更地に落ちていた欠片を見かけて拾ったことがすべての始まりで、それをひとつ置いたことから、その次のひとつも置くことになり、結局今も続けている。お終いは、焼け残った自分の欠片をひとつ置くことになるのかも。

【ほぼ百字小説】(4899) 化けた、なんてよく言うよね。まさにそれ。昔は地味だったよ、舞台の上でもね。それが今じゃあれだ。見事に化けたなあ。でも、暗転中は気をつけろよ。暗闇の中だと化けすぎて、ヒトじゃなくなってることがあるから。

【ほぼ百字小説】(4898) あいつがやってくる。海から来て街を破壊してまた海へと帰る。その一連に台本があることが一般にも知られるようになって、昔ほどには恐れられなくなった。でも、あいつ、最近は台本を憶えられなくなっているらしい。

【ほぼ百字小説】(4897) 朝起きるとパネルに、メーカーに連絡してください、の表示が。電源を切ってまた入れると、表示は消えてまた動く。いつまで大丈夫かわからないが、メーカーなんてもう無い。一日分しか記憶がないのもそのせいかなあ。

【ほぼ百字小説】(4894) 刻々と変化する複雑な路地だが、あみだくじの規則で進めば、駅から自宅まで必ず帰り着けるのだ。こんなことよく発見できたなあ。なぜこんなことになっているのかはともかく、それで四つ角がひとつもなかったんだな。

【ほぼ百字小説】(4893) リニューアルだかパワーアップだか、ようするに古い部品を新式に交換したり新しいのを付け足したりでごりごりがりがりやられていて、それが済むまでは動けない。電子脳にはやることがなく、でも停止もできないとか。

【ほぼ百字小説】(4892) オバケのプラモデルの箱には、すごく怖いオバケの絵が描いてある。これを組み立てても、こんなに怖くはないだろう。そう思うと作る気がしなくて、そのままにしてる。お父さんとお母さんは、なぜぼくを作ったのかな。

【ほぼ百字小説】(4891) ずいぶん大きくなったが、まだ乗れるほどではない。そう思ってきたのだが気がついたら、無理すれば乗れなくもない大きさだ。我々よりも長生きな生き物なのだ。これなら、死んだら乗せてくれるかも。ひとり乗りだな。

【ほぼ百字小説】(4890) 怪獣のお墓は、生前にそいつが壊した建物を模したものというのがお決まりだったが、近頃では別の怪獣が壊したビルだったり、まだ倒されたこともないタワーだったり。怪獣のお墓は、怪獣のためのものではないんだな。

【ほぼ百字小説】(4889) 軒下に吊るされた柿かと思ったら、柿色の月だ。通りかかるたびに、いい色だなと思う。いちばん上が満月で、日に日に痩せていく月がその順番に紐で繋がれて吊るされている。もうすぐ全部揃うだろう。うまそうな色だ。

【ほぼ百字小説】(4888) 燃えるような夕焼けなのではなく、実際に西の空が燃えている。そう知っていても、この夕陽の綺麗な丘から見事な夕焼けを見ているのだと思い込むことはできる。たぶん、まだあと何日かはそうすることができるだろう。

【ほぼ百字小説】(4887) 見渡す限り続く湿地の中の一本道で、大気は有毒だしすれ違えるだけの幅はない。途中で対向車と鉢合わせしたら、こちらが引き返すか向こうに引き返してもらうしかないが、それでも誰かに会うとほっとするものらしい。

【ほぼ百字小説】(4885) 高枝切り鋏を貰いに行く。受け取り場所が大きな公園の近くなので、ついでにラッパも持って行く。片手にラッパ、片手に鋏を持って午後の公園へ。ラッパと鋏は使いよう、という言葉が頭に浮かんだが、意味はまだない。

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