小説を書いたりしてます。
【ほぼ百字小説】(5469) スマホを持つようになってもまだ古いデジカメを持ち歩くのは、たまに撮った覚えのない写真が入っているから。なんでもない空や雲や道端の草の写真だが、それがどこなのかわからない。こういうのも心霊写真なのかな。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5468) ずっと探していた。この世界が舞台のようなものだとすれば、神の視点の客席からも観測できないそんな場所がどこかにあるはず、と。そして見つけた。やはりあの世界は舞台だったのだ。今、楽屋でそんな話をしている。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5467) もう秋になってもいいはずなのにずっと真夏みたいで、狸にでも化かされているのかも、とか思っていたら、雨の後いきなり涼しくなって、ようやく秋が来たのかそれともこれも狸の化けた何かか。空には尻尾みたいな雲。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5466) 廃物で作られた天使が迎えに来た。翼はどこかに捨てられていた鷹の剥製のものだろう。見覚えはあるが、どこで見たのだったか。頭の上の輪は、缶詰のパイナップル。垂れた汁が、額を濡らしている。できたてなのだ。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5465) もう夏も終わるはずだが、あいかわらず真夏の暑さで、そして物干しにいる亀はこの夏、卵を産まなかった。二十五年以上、ずっと産んでいたのに。老化なのか、それとも何か他に原因があるのか。亀のことはわからない。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5464) 固く畳まれた翼は甲羅として機能するし、空気中を高速で運動するとき揚力が発生する甲羅は胴体翼として機能する。つまり、翼は甲羅であり甲羅は翼である。天使と亀とが同じものかも、と考え始めたきっかけは、それ。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5463) 砂の山に立っている棒を倒さないように気をつけながら、できるだけ多くの砂を取っていき、棒を倒した者が負け。だとばかり思っていたのに、砂をぜんぶ取り除いても棒はまだ立っている。誰が勝って、誰が負けたのか。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5462) サメたーいむ、海水浴たーいむ。サメたーいむ、書き入れたーいむ。サメたーいむ、入れ食いたーいむ。サーメサメサメー、サメのたーいむ。サメじゃないけどサメのたーいむ。醒めた目をしたサメのたああああああいむ。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5461) 波間に漂う紐のようなものが、図形を作っていた。次から次へと形を変えるそれらが文字のようにも見えたから、もっとよく見ようと覗き込んだところまでは憶えていて、だからこうして文字になって伝えることもできる。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5460) すっかり天使率が高くなった空の下を『交差点の天使』の解説を書いてくれた演出家の手掛けた芝居を観に行くその途中、玄関前に置かれた亀の水槽を見かけて、水槽に書かれていたその亀の名がトキ。『かめたいむ』だ。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5459) 地上はまだ暑いが、空は秋になって天使率が急上昇しつつあるようで、様々な天使の部品がそこここに浮かんでいる。それらを見上げ、頭の中で好きなように組み立てていると、ほんのすこし身体が浮かぶような気がする。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5458) 創作というより、自分に流れ込んでくるものを溜めて固めて出しているだけ。つまり、空っぽの器のようなもので、なるほど出てくるものはいかにも小さい器のそれだ。まあ小さい器には小さい器にできることがあるから。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5457) 最初のドミノが倒された時点で、すべては決定されている。だから選択できるのは、最初のドミノを倒すか倒さないか、だけ。倒されれば結末まで進んでいく。もう止められない。ああ、うっかり倒しちゃったんだよなあ。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5456) 開けた瞬間にもう缶詰ではなくなるから、それでは缶詰の中を見たことにはならず、だから缶詰の中を見るためには缶詰を開けずに見なければならない。いっしょに缶に詰められたのは、そんな理由らしい、と缶詰の中で。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5455) 鉄橋を渡る電車の窓から川面を見ていて、でかい亀がっ、と声を上げそうになり、でもそれはわずかに水面に出た大きな岩だと気づいて、そうだった、この前もそう思ったっけ、と毎回思い出すというのはどうしたものか。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5454) 月着陸船の模型を持っている。月の海に水は無いから船なのに脚がある。その脚で月の海に立ったのだ。帰るときはもういらないから、月の海に置いてきた。今もそこに立っている。月を見上げる度、その脚のことを思う。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5453) 今夜も月を見に行く。そういう季節なのだ。狭い路地を奥へ進むと小さな空き地に出る。そこに立てばいつでも月が見える。だからあれは本物の月ではない、という者もいるが、それは我々だって同じようなものだろうし。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5451) ここにあった海がどこかへ行ってしまってから、毎日ここに立って海が帰ってくるのを待っている。毎日同じところに立つから、海のあったところにある砂丘がゆっくり移動しているのがわかる。大きな波のようだと思う。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5450) 亀を使って未来を予知する、という方法は大昔から用いられてきたが、実際には、亀は未来を予知しているのではなく未来を創造している、ということが証明されつつある、というこれもまた、亀によって創造された未来。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5449) 未来の動きを決めてもらう。その未来の先の未来へと安全に進めるように。その未来に居合わせることが決まっている者たちが集まって、指導を受ける。そういう職業があることは知っていたが、決めてもらうのは初めて。#マイクロノベル #小説
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