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【ほぼ百字小説】(5060) ついに尻尾を出したが、これは狸に化けているのだ。もし捕まっても、狸として捕まるのなら仲間に被害が及ばない。だからまず狸に化けている。そんなのとっくの昔にお見通しだ。ならばお望み通り、狸汁にしてやろう。
 

【ほぼ百字小説】(5059) ぶつかりおじさんなるものが存在すると聞いたことはあったが、そのぶつかりおじさんを捕獲する組織があるらしい。ぶつかりおじさんを兵器に改造し海外に売りとばすのだ。日本製のはカミカゼと呼ばれ高く売れるとか。
 

【ほぼ百字小説】(5058) まずキューピーを買っていただきます、ビールはいちキューピーです、キューピーありがとうございますっ。あ、そこは、サンキューピー、じゃないんだ。安いけど何かに化かされてるみたいで、たとえばキューピーの狐。
 

【ほぼ百字小説】(5057) 西日が射して壁に影が。それはどう見ても輪を作ったロープの影なのだが、この部屋にそんなものはない。それにしても首を入れるのにちょうど良さそうで、影だけでもやってみるか、と立ち上がったら、自分の影がない。
 

【ほぼ百字小説】(5056) 首の無い雛人形がひと揃い。しかし無いのは首だけで、それ以外すべて揃ったものを飾っている。なぜこういうことになったのかは教えてくれないが、うちの雛人形は昔からそう。どこかには首だけの雛祭りもあるのかな。
 

【ほぼ百字小説】(5055) 毎年この時期になると大陸から渡ってくる。多いところでは、空が暗くなるほどだとか。全体で図形や文字を描いたりすることも。なぜ彼らが渡るのかを始めとして、自律ドローンたちの集団行動には、まだまだ謎が多い。
 

【ほぼ百字小説】(5054) たまに自分が落ちている。毎日同じ道を歩くから、落とすとすれば同じ道のどこかで、だから拾われたりしなければ落ちたまま。落ちている自分を横目に毎日通り過ぎるうちにある日なくなっていて、少し残念になったり。
 

【ほぼ百字小説】(5053) 見た目がその楽器に似ているからその楽器の名前で呼ばれていたのが、いつからかその楽器の音で呼ばれるようになったとか。そんな話を聞いてからは、道端に咲いたそれを見ると音で聞こえる。たん、ぽぽ、たん、ぽぽ。
 

【ほぼ百字小説】(5052) そうか、たった百字でもちゃんと自分で動くことができるのか、というか、ちゃんと自分というものがあるんだ。自分があるから自分で自分を書き換えて、それでもう百字より多くなっているし、あとは自分でやってくれ。
 

【ほぼ百字小説】(5051) 百字を膨らませ運動できる空間を作る。観測者が不可欠なのは、観測が運動に影響を与えるからで、その影響を排除するのではなく利用する、というのがこの実験の主旨。天満天神繁昌亭へのご来場ありがとうございます。
 

【ほぼ百字小説】(5050) 路地の奥の店の二階に好きなものを持ち寄って披露しあう、そんな集まりで今宵もいろんなものががちゃがちゃと並べられたが、その並べられたものたちもいろいろと披露しあっているようで、それを見るのもまた楽しみ。
 

【ほぼ百字小説】(5048) 自分を言葉に置き換える。毎日少しずつ、確実に。世界は言葉で出来ているから、自分を言葉に置き換えさえすれば、言葉として世界に干渉できる。あの魔法使いたちが呪文と呼んでいたのは、こういうことだったんだな。
 

【ほぼ百字小説】(5047) 行きと帰りで道が違うという不思議にも何か理由はあるのだろう、と書いた翌日、その疑問を磁性現象とのアナロジーで考察した文章に出会って不思議な気持ちになったが、こういう不思議にも理由はあるのだろうと思う。
 

【ほぼ百字小説】(5046) 今年はもっと古い先祖まで降りて行くことにした。階段を下れば下るほどお墓は古くなって、ここから先、日帰りは無理。もちろんキャンプ用具も持って行く。途中、お墓参りで遭難した人たちのお墓にもお参りしとこう。
 

【ほぼ百字小説】(5045) 行きは歩き、帰りはゆっくり走る。それだけで同じ道が違って感じられるし実際、行きと帰りで少しだけ経路が違う。猫の多い路地は帰りだけ、まっすぐな路地は行きだけ。理由はわからないが理由はあるのだろうと思う。
 

【ほぼ百字小説】(5044) 世界は成長する複数本の柱に支えられていて、柱の高さが同じなら水平は保たれるが、成長速度の差で世界は傾いてしまう。この傾きを補正すべきと考える派と傾きを利用すべきと考える派との間で今、世界は揺れている。
 

【ほぼ百字小説】(5043) シマウマだと思っていたら、あの縞模様、プロジェクションマッピングなのだ。まあそんなことでいちいち文句を言うのは野暮だから、絶滅してなかったのかあ、と喜んで見せたが、きっと縞模様だけではないのだろうな。
 

【ほぼ百字小説】(5042) 男女がなにやら揉めていて、口論からつかみ合いになり、動作も声も大きくなっていく。男の身体が倍ほどに膨らみ、女はばさばさ宙を舞う。興奮して元の姿に戻ってしまったらしい。今は求愛ダンスからやり直している。
 

【ほぼ百字小説】(5041) 捨てるに捨てられないままいっしょに暮してきた蒲団は、今ではもう一階すべてを覆いつくす大きさにまでなってしまい、そろそろ家から溢れ出すのか、あるいは、家を背負って動き出すのか。二階から見届けようと思う。
 

【ほぼ百字小説】(5040) パン屑目当てに集まった鳩たちに全身が覆われたところで、ぱんっ。いっせいに鳩が飛び去ったあとには誰もいない。最初は奇術として行われていたらしいが、種も仕掛けも無しでやれることが、今ではよく知られている。
 

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