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8月に読んだ本。ミステリとホラーばかり読んでいるうちに夏が過ぎてしまった。

◆フランス革命前後のヨーロッパの小国が舞台の、潮谷験『伯爵と三つの棺』が面白かった。最初はすごくくだけた調子に驚いたが、時間と時代の移ろいによって明かされていく真相の描き方が最後まで良かった。

◆オーストラリアミステリの『ぼくの家族はみんな誰かを殺してる』(ベンジャミン・スティーヴンソン/富永和子訳)は、それまでの章立て手法がにわかに活きる最終盤の構成が好きだった。

◆話題のホラー、上條一輝『深淵のテレパス』は、重要なことから些細なことまで全ての会話やシーンにさり気なく仄めかしが盛り込まれていたと分かり、デビュー作なのに上手いなあと。
それと日本の会社員たちが毎朝作り出す葬列、暗澹たる日常の書きっぷりがスゴイ。辛い。

◆松原タニシさんの本を初めて読んだのだが、私がこれまで想像していた「賃貸物件としての事故物件」の様子とは違いすぎたし、相当にエグかった。「怖い話」の意味が違う、妙に迫力のある話もバンバン出てきて、唖然としてしまう。

そのほかの8月に買った本。

『喉に棲むあるひとりの幽霊』(デーリン・ニグリオファ/吉田育未訳)は、250年前の詩人の姿を捉えようとしてもがく著者の、痛みと切迫感に満ちた破滅的とさえ感じる語りが凄かった。
奈倉有里さんの『文化の脱走兵』も素晴らしいエッセイ。『群像』の連載を読んでいたけれど改めて通して読むと、タイトルに込められた言葉に胸が詰まる。

◆『ナイルの聖母』スコラスティック・ムカソンガ/大西愛子 訳
◆『喉に棲むあるひとりの幽霊』デーリン・ニグリオファ/吉田育未 訳
◆『スイマーズ』ジュリー・オオツカ/小竹由美子 訳
◆『万両役者の扇』蝉谷めぐ実
◆『テヘランのすてきな女』金井真紀
◆『文化の脱走兵』奈倉有里
◆『マザリング 性別を超えて〈他者〉をケアする』中村佑子

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