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昨年最初の読書がモハメド・ムブガル=サールの『純粋な人間たち』だったので、今年の一冊目もサールにしようと決めていた(積んでいた『人類の深奥に秘められた記憶』)のだけど、地震以来気持ちが落ち着かなくて、なかなか読書ができず。
ただこんな状態でもミステリは何故かいけると気づき、昨年末の各誌ミステリランキングにランクインしていた積読本を中心に読んでいた。

読んだ中でも特に、荒木あかね『ちぎれた鎖と光の切れ端』が良かったです。
復讐の手段としての殺人、憎しみのぶつけかた、自ら裁き罰を与えることについて、それは間違っていると、様々な視点でもって繰り返し真正面から伝える物語がすごく誠実だった。

荒木あかね『ちぎれた鎖と光の切れ端』

すごく真っ当で大事な視点とメッセージが詰まっていてビックリしました。最近読んだミステリの中で、屈指の真っ当さ。
この社会で寄り添って生きる、血縁によらない関係性を描いているのも良かった。何より、めちゃくちゃ良い女バディが生まれたのが嬉しい〜!続編希望です。

家族間や部活動や会社組織で生じる、さまざまな形の抑圧や所有意識やパワハラといった加害と、権力勾配に無自覚でいること。
そうした健全ではない関係性を理解するまでの心理が、複数の人物を通じていろいろな角度から描かれているのが良かった。
たとえ加害者が「愛情ゆえ」と本心から思っていたとしても、それは正しくないし、受け入れる必要などないということもハッキリと。

荒木あかね『ちぎれた鎖と光の切れ端』

登場人物の容姿に過剰な言及がないのもすごく楽だった。
若い作家さんがこういう物語を書いているということがめっちゃ嬉しい。
男女が親しくしていたり共に暮らしていることを、恋愛/性愛関係だと他人から勝手に決めつけられる煩わしさや怒りの描写がしっかりあるのも嬉しかったので、続編が出るとしても彼らの関係性に恋愛は絡まないでほしいな。

すごく誠実なミステリだと思いましたが、事件そのものや展開はエグくて辛いので、誰にでもオススメ!かどうかは分からないのですが……。
それと九州地方に蔓延る男尊女卑については、偏見を再生産してしまうのでは……?という懸念も少しあるのだけど、「田舎だとバカにして、そこに住む人間を蔑ろにするな!」という旨の釘刺しはちゃんとありました。

めちゃくちゃ真っ当なメッセージのあるミステリで嬉しかったのに、またKADOKAWAが最悪すぎて……

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