ミシェル・ザウナー『Hマートで泣きながら』
ザウナーが葬儀で話した弔辞について、母がいかに得難く傑出した人であったかを伝えたいがあまりに、逆に母の生き方を軽んじていたと気づくくだりに胸をつかれた。
自分の思う理想像や良しとする在り方とは違うからと、否定や蔑視を向けてはいないか。これは私も本当に常に意識して顧みないと…
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“わたしだけが明かすことのできる母の特別な一面をわたしは掘り起こしたかった。母はただの主婦やただの母親にはおさまらない人だったと伝えたかった。夫や子供の存在がなくても、個として特筆に値する人だったと言いたかった。慈しみ愛したい人も稼いで創造したい人も、得られる達成感は同じかもしれないのに、おそらくあのころのわたしはそれをまだ受け入れられず、母がなにより誇りにしたふたつの役割を偉そうに見下していたのだ。”