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『両京十五日 凶兆』おもしろかった!! ザ・エンタメ。中国・明代。尊敬される父親の金で呑んだくれるも裏では事件を解決して父親の手柄にしていた捕吏、忠に篤く非義は行わぬと決めて貫く記憶力抜群の文官、才能あふれる医者の技を亡き親友の復讐に投じる女性の三人が、偶然に出会い、命を狙われる太子の仲間となって彼を即位させるため都に向かう旅に出る。
即位の期限まであと十五日。ちっとも寄り道できないのに一日に一度は危難に襲われて、つど旅路はご破算。ずっと危難→脱出の繰り返しで進むが、危難のパターンが豊富&徐々に明かされる人物たちの心情に引きこまれて濃密な時間を過ごせた。特にパーティーの結束が強くなる後半では各自の得意を互いに信じて任せられるようになるのがコレだよ!で良かった。
例えば文官は頭でっかちで市井に通じず騙されたり窮地を呼んでしまったりするのだが、絶対に曲私をせぬので、金がなければ協力しない捕吏が自分の真珠を預けもする。パーティーの中で一番の切れ者で胆力があるのは女性である医者だし、太子は史書に己がどう記されるか常に気を揉んでいるが身分を隠した旅で王家の政治が民を明るく照らしてはいない現実を知ってゆく。(続く)

(続き)捕吏もまた過去に自分も知らない謎があり、どうも書きぶりとしては初対面のはずの太子と関係がありそう…? 「凶兆」は上巻にあたるので非常にいいところで「続く」になってしまった。明日にでも下巻を読みたい。三月に出ます。
追ってくる敵も魅力的なのがいいんだよなあ。もちろん私腹を肥やしてるだけのやつもいるが、敵の主役はやはり切れ者でいつも甘味を食べてる敏捷な女性&恩人である捕吏を極楽に送ろう(二重の意味)とする殺人者。ヤツが現れたら終わり、という絶望感の演出がとにかく上手だった。
あと終盤で人夫の「暴動」を指揮してのけた老人が出てくるんだけど、その才覚も過去も官府に逆らってひとり罪を背負う覚悟も決まりすぎるほど決まっていた。こういう老人を出されると大変に効く……。
明の歴史をマジで知らないが、見事な人物のキャラ立てを活かしたくすぐりが度々入って深刻さを緩める手が巧みで、とにかく先が気になり読んでしまう作品だった。

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