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honto.jp/ebook/pd_32812335.htm
『文学キョーダイ‼』ロシア文学研究者の奈倉と「同志少女」の逢坂によるきょうだい対談。表紙のイメージから文学を仕事とする二人の過去の語りかと読み始めたが、ルーツへの言及もありつつ、本題は「文学で達成する平和」についてだった。各々本を愛しながら興味関心は重なるようでずれていて、しかし小説は戦争を否定し平和を達成する手段になり得るし、それをやっていくという決意がみちみちの内容で、勇気をもらえた。
何かしらの理由を押し立ててフィクションが見下されるとき、それは見下す側の偏狭さを表すと語る。例えば戦争小説は戦争を体験した人しか書いてはいけないわけはないと奈倉は言う。ここはすごくなるほどと思ったところで、体験した人が書いたものが本当にリアルならば読んだ人もまた一種の戦争体験者になり得ると。そうでなければその本はリアルを描けていないことになる。また戦争小説は実際の戦争を二度と起こさない意志を伝承させるものでもあると。
僕はフィクションを好み、色々なリアル体験の乏しさに後ろめたさがあるのだが、それでも現実を平和に持って行くことに関われることはあるのだ。
たまたまこの時期に繙いたため内容の多くが「今」と重なったが、著者たちの関心は常に平和から逸れないからこそ>

「今」を置き去りにすることも後れることもないのだろうと思う。
翻訳物が好きなので翻訳がもたらす共同性についての言及もよかった。ロシアに留学し、「ピッピ」を読んできた人と出会い、国が違っても同じものを読んで育ってきたこと、そこから得るものの共同性と慕わしさ、他者を知るきっかけとしての翻訳文学の可能性に自分はしびれるような喜びを覚えました。
本編中、読んでいる自分すら忘れられるような作品に出会えると嬉しいよねという読書の嬉しさを語る場面があり、うんうん頷きながら読んだが、この本もその忘我の一冊になるものだと言いたい。

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