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honto.jp/netstore/pd-book_3211
『詐欺師はもう嘘をつかない』読み。バイセクシュアルの女の子が主人公。母親から詐欺の道具として子ども時代を支配され、彼女がターゲットに定めた男たちが気に入る「女の子」になるよう名前や性格を躾けられていた。現在は母親と彼女の最後の男をともに刑務所にぶち込んだ後で、妹の自由と安全のためなら何でもする姉と一緒に「ノーラ」として暮らしている。そのノーラが元カレと今カノの三人で訪れた銀行で、銃を持った強盗と遭遇。生還するために過去の女の子たちの仮面と技術を再びまとう話。
vs銀行強盗という非日常のサスペンスに、性的暴力や虐待の過去の日常が回想で重ねられ(なるべく直接的な場面描写は避けて)、自分であって自分でなかった、母親に使い捨てられてきたガールズを痛みから脱出させる物語だった。
「大人の男が望む女の子」の型とは対蹠的に、ノーラと彼女であるアイリスの口調には役割語がほぼ見当たらない。50年代のドレスを普段着にする少女の口調に過度に「女の子」らしさをまぶさなかったことが翻訳の方の判断なら、この方の翻訳は読む基準になるなと思った。 〉

ノーラと姉のリー(強靭)はもとより、ノーラの元カレでありお互いの傷の位置を深く知っているウェス、ノーラの今カノであり恋人の過去を急激に知ることになるが受けとめる覚悟を何度も見せつつ生還のための爆弾を作ってしまうアイリスと、メインの子どもたちがとても良い。
著者は特にYA世代の子どもたちのために書いているようで、ノーラと一緒に恐怖と支配に抗ってくれるウェスとアイリスを子どもたちが知ったら、きっといい友人として記憶の中に住んでくれるだろうと感じた。
本編終了後に虐待対策のホットラインが載せてあったり、シスジェンダーの女性の中でという表現のようにトランスの存在を蔑ろにしなかったりと、フィクション-リアルのラインに非常に気を配っていて、そこも信頼の一冊になった。

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