左下ポントルモ「キリストの十字架降下」
右下「神々と巨人族の戦い」
1545年のトリエント公会議以降、この「ダイナミック」な技法を用いて「反宗教改革」のいわば視覚的デモンステレーションとなったのが、ルーベンスとその工房です。
カトリックはプロテスタントと違い、「聖書」を信徒が「勝手に読む」ことを禁止します。
しかし、ルター以降活版印刷の技術と識字率の向上によって、信者を「聖なるテクスト」を媒介に激増させたプロテスンタントに対し、態勢を立て直したカトリックは、ダイナミックの技法を用いた「視覚的物語」によって「民衆」の聖書への要望に応えようとします。
ネーデルランド北部の教会では壁の装飾が白く塗りつぶされたり、教会自体破壊されたりしましたが、ネーデルランド南部(つまりフランドル)では、ルーベンス派の絵が教会を占拠していきます。
「フランダースの犬」のネロが見るのを望んだアントワープの教会のルーベンスもその一つです。
ことほどさように、政治と美術は分かちがたく結びついているのです。