今年読んだ本の中で暫定ベスト!
オリンピアンである著者・為末大が自らの競技者としての経験とその道を極めた人物達との交流を基に、なにかを「熟達」するとはどのようなメカニズムであり、そこではどのような心の動きがあるのかを緻密に言語化する。
熟達への道のりは、遊・型・観・心・空の五段階に分類できると説く。それぞれの段階に共通するのは、人間の柔軟性への信頼だ。人間の心が柔軟である故に、遊んで様々な可能性を模索することができる。また、その可能性を型にはめることによって、より良い方向へと導くことができる。そうして導かれた型を観察することで、中心と周辺とを分別することができる。立ち返るべき中心が定まると、中心から外れてみる冒険ができる。やがて、それまでの四段階を意識していた自らを手放し、空=無意識を得られる。無意識であるがままの自分・あるがままの環境を受け入れられると、遊んで可能性を模索できる領域がさらに広がる……、そうして五段階のサイクルが回っていく。
オリンピアンの説く、身体と精神とのバランスのストーリーは説得力に満ちており、読み応え十分。充実した人生の一部を垣間見させてもらったような気分で、とても満足しました。
https://www.amazon.co.jp/熟達論:人はいつまでも学び、成長できる-為末-大/dp/410355231X?__mk_ja_JP=カタカナ&crid=2PIQLP49NBUAU&dib=eyJ2IjoiMSJ9.r2_qwCnMPrJk-356kWoARzpia18O5KGJKNki2wbRUXYVSnDEclDosGnjBStyF5J_BSW4akdJVrVOFMR814upj7dEL2I1H_S7Gig-spbRmAyIZSCV0u90U1y63fi5vUtv.bVOwPJSt1PFNZBDY7m59nAbc0Bhyznxwpvzaq900jKc&dib_tag=se&keywords=熟達論&qid=1712756548&sprefix=熟達論,aps,280&sr=8-1&linkCode=sl1&tag=yoshizaki1029-22&linkId=4ec389c42650b9ec4393f9c460d44cbc&language=ja_JP&ref_=as_li_ss_tl
上達・熟達に関しては2023年に読んだ『習得への情熱』(ジョッシュ・ウェイツキン)も説得力に富んでいましたが、『熟達論』は『習得への情熱』よりも抽象化の度合いが高くて好みでした。