すっかりマッチョに風貌を変えて生還した「S」だが、実はとても深刻な状況を抱えて戻ってきた。戦場で常に警戒し緊張しなければならない状況を経験したせいでPTSDを患って、イラクから遠く離れた横田基地の住み慣れた宿舎でも銃を近くに置いておかないと眠れない不眠症状、眠っても悪夢にうなされるという状態だった。とてもおしゃべりでひょうきんな男が本当に寡黙になってしまった。退役し一度帰国してドクターにかかりセラピストにもかかり、なんとか体調を持ち直すと約3年後にまた大好きな日本に戻ってきたけどその時はまた薬とストレスで激太りして風貌が大変化。米軍兵という職業の宿命とはいえ、戦争に翻弄された彼の半生だった思う。自分としては彼「S」という存在のおかげで戦争が一個の人間に与える現実を隣人の立場で図らずも知ったわけだが、震災原発事故同様に人の数ほど戦争のリアルがあり、そのほとんどは個人にとって悲惨以外の何ものでもないと断言するしかなく、地獄と餓鬼と畜生と修羅の世界をぐるぐると回り続けるしかない戦争という愚挙には絶対に反対し続けるしかないとの思いを今日も新たにしている。