グラスオニオンみたわよー。金持ち日和見連中の戯画化が過ぎるのと終盤のやり口は好みが分かれそうなとこだけど(これは前作からちょっと過剰な傾向を感じた)これくらいコメディにしてあるとミステリとしての「本当らしさ(らしくなさ)」のラインの引き方がちょうど良くなるんだな。割と長尺なんだけど一瞬も話を止めないでペラペラペラペラ喋り続ける流れが楽しく、無駄に派手なカメオも新春かくし芸大会って感じの馬鹿馬鹿しさを後押ししてくれる祝祭ムードがあった。年明けに見て良かった気がするわね。
私は自分は他の連中より頭がいいと思ってて金持ってるバカが本当に嫌いなんですよね、その手の類をバカにするためならどこにだっていきますとも、みたいなブノワさんのうすら変な名探偵性のツイストは前作よりうまく機能していた気がする。今回はフーガですよと最初に示してくれる古式ゆかしさも良い塩梅。小説では無理な「映画でしかできなさ」がいちばん出てたのは鼻にー!鼻にー!のとこかな?
ブノワさん探偵として謎を解くというより「ふりをする」が好きな人な気がする。空気読まない名探偵茶番やってるときの嬉しそうなこと。というのはダニエル・クレイグがあまりにも楽しそうに見えるからかもしれない。いうても他人事っすからね、という。
このシリーズは真面目な作家のぎこちないコメディ性というのかなー、ある種の「寒さ」がコテコテな舞台の古式ゆかしいミステリと名優たちのアンサンブルと噛み合う(知られた俳優が多ければ多いほどフーダニットは目眩しできる)ことで良い感じに成立しちゃうというおかしみがよき部分と思っているのよね。
ライアン・ジョンソンの生真面目な脚本はあんまりシリアス路線にいかないほうがよいと思うんよなー。いやコメディがうまいわけではないと思うけど、なんかいいバランスになるというか。ミステリとしてのフェアさを担保するアイデアの絶妙さでいけば前作だけど、フェアだと?ハーン?それどころじゃねーだろ?と言ってしまう、こういう(多少雑な)暇つぶしミステリの感覚もまた楽しめたわよ。なんかカメオの人たちも極上の暇つぶし映画作るのに一枚嚙みたさあったんではなかろか。何しろ2020年だものねえ。