大統領師匠「はんなま砦は夜更けまで」ネタバレ 

大統領師匠「はんなま砦は夜更けまで」を観てきた。
なみが統合失調症と語られるところで、「彼女の状態は統合失調症の症状には見えない」「むしろ、一般的には百合の状態(つまり、この演劇の世界全体)の方が統合失調症のステレオタイプには合致する」「そもそも、人間の精神世界をコミカルに描いている作品で、統合失調症という実在の病名を持ち出すのはスティグマの強化にならないか」ということが最初気になったし、なみが救われなさすぎる……と思ったのだけど、オラエッタのことはなみ本人ではなく、「百合の中にいる人格のひとつとしてのなみ」だと考えればいいのかなあと思った。
統合失調症的な状態にある百合の中には、彼女を責め続ける人格「なみ/オラエッタ」がいる。
百合が苦しんでいるのは総理の息子のせいでも現実のなみのせいでもなくて、なみを不幸にしたのは自分だと自分を責め続けているからなのではないか。
悪いのはなみでも百合でもなく、姉妹の扱いに差をつけた両親と祖父なんだけどね……。
更に、なみの中にももうひとつの人格「あみ子」がいる。
なみのお腹の中の子供として理解される「あみ子」は、むしろなみのインナーチャイルドなのでは?

大統領師匠「はんなま砦は夜更けまで」ネタバレ 

なみの中の、歪んでしまう前の子供時代の自分のイメージ。
純真無垢で、本人は優しい子なんだけど人の気持ちが全くわからないし、したいようにしていると周囲からは化け物と見なされてしまう、そういうあみ子を自分の中に抱えているところを見ると、なみはかなり自分の気持ちを抑え込む子供時代を送ったのではないか。
あみ子という命名からして、発達特性があってもおかしくないし。
自分の中の子供をどうするか、というテーマが見えてくるので、終演後の「子育て三部作」という言葉にはさもありなんと思った。
(なみのあみ子への接し方と、そこから透けて見えるなみに対する親の接し方の方が「子育て」というキーワードには直結しそうだけど)

大統領師匠「はんなま砦は夜更けまで」ネタバレ 

これは姉に対する罪悪感から精神のバランスを失ってしまった百合の、自己治癒の物語(実際、彼女の精神世界の登場人物は彼女の書いた物語の登場人物でもある)なのだけれど、なみとあみ子を追い出すことがほんとうに最善のやり方だったのかなあ、白百合のように無辜な自己イメージを守り抜いて、自分がヒロインである物語の中で生きていくのでいいのかなあ、という懸念を残す終わり方でした。
面白かったです。

フォロー

大統領師匠「はんなま砦は夜更けまで」ネタバレ 

あとオラエッタがろくに仕事をしないアリアに怒っているというところから、マルタとマリアも入っているのかなあ、古島たちを「救世主」に見立てる台詞もあったものなあと思い、ということは「父」とは……? 百合の相続というのは「天の国を継ぐ」こととかかっている……? などと考えるのも楽しいですね。

ログインして会話に参加
Fedibird

様々な目的に使える、日本の汎用マストドンサーバーです。安定した利用環境と、多数の独自機能を提供しています。