貝の幻想短編集。
『はるけき海境の同胞よ、蒼穹に物語せよ』

「愛することも食らうこともここでは同義。命があるのならば、旅路の涯の証明にそうしたさ」

タコブネ、クマサカガイ、テンシノツバサ、タカラガイ、カイロウドウケツ。
曠野からはるけき海の底までの旅路を語る短編集。

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くるっぷに飛ぶと「タコブネ」という1話全部読めます

七本脚のこどもには、旅をさせるな。
 おれたちの一族にはそんな言い伝えがある。
 七本脚のこどもが生まれたとき、一族は滅びる。
 王は、夢でそう予言を受けた。
 おれは王の予知夢の直後に生まれた。脚は、八本にひとつ足りなかった。
 王が抱えていた卵のなかに七本脚のこどもを発見し、家臣のひとりが大慌てで連れ去った。それがおれだ。卵は四つあったはずだが、子は三人。不審がる王に、卵から出られなかったものがいたのです、と家臣は言った。卵のなかですでに死んでいた、と。
 苛烈な王は怒り狂った。抱卵が悪かったと言われた気がしたのだろう。その家臣は、おれを岩山の賢者にあずけるだけあずけて八つ裂きにされた。賢者がそう言っていた。物心つくまえのおれがおぼえているわけがない。
 賢者の岩山は、王の館の背後にそびえていた。王は、山裾の穴に棲んでいる。穴は大昔からあいているものだ。その昔、天の使いの一族が、翼で掘った伝説が残っている。
 おれは、その高いところから、毎日毎日、王の館を見下ろしている。
「あまり下を見るものではない」と、賢者は言う。

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