貝の幻想短編集。『はるけき海境の同胞よ、蒼穹に物語せよ』
「愛することも食らうこともここでは同義。命があるのならば、旅路の涯の証明にそうしたさ」
タコブネ、クマサカガイ、テンシノツバサ、タカラガイ、カイロウドウケツ。曠野からはるけき海の底までの旅路を語る短編集。
https://yominomike.official.ec/items/31484136#fedibird #同人誌 #小説
試し読みもあるよ。くるっぷに飛ぶと「タコブネ」という1話全部読めます
七本脚のこどもには、旅をさせるな。 おれたちの一族にはそんな言い伝えがある。 七本脚のこどもが生まれたとき、一族は滅びる。 王は、夢でそう予言を受けた。 おれは王の予知夢の直後に生まれた。脚は、八本にひとつ足りなかった。 王が抱えていた卵のなかに七本脚のこどもを発見し、家臣のひとりが大慌てで連れ去った。それがおれだ。卵は四つあったはずだが、子は三人。不審がる王に、卵から出られなかったものがいたのです、と家臣は言った。卵のなかですでに死んでいた、と。 苛烈な王は怒り狂った。抱卵が悪かったと言われた気がしたのだろう。その家臣は、おれを岩山の賢者にあずけるだけあずけて八つ裂きにされた。賢者がそう言っていた。物心つくまえのおれがおぼえているわけがない。 賢者の岩山は、王の館の背後にそびえていた。王は、山裾の穴に棲んでいる。穴は大昔からあいているものだ。その昔、天の使いの一族が、翼で掘った伝説が残っている。 おれは、その高いところから、毎日毎日、王の館を見下ろしている。「あまり下を見るものではない」と、賢者は言う。
https://crepu.net/post/7392#fedibird #小説 #同人誌
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七本脚のこどもには、旅をさせるな。
おれたちの一族にはそんな言い伝えがある。
七本脚のこどもが生まれたとき、一族は滅びる。
王は、夢でそう予言を受けた。
おれは王の予知夢の直後に生まれた。脚は、八本にひとつ足りなかった。
王が抱えていた卵のなかに七本脚のこどもを発見し、家臣のひとりが大慌てで連れ去った。それがおれだ。卵は四つあったはずだが、子は三人。不審がる王に、卵から出られなかったものがいたのです、と家臣は言った。卵のなかですでに死んでいた、と。
苛烈な王は怒り狂った。抱卵が悪かったと言われた気がしたのだろう。その家臣は、おれを岩山の賢者にあずけるだけあずけて八つ裂きにされた。賢者がそう言っていた。物心つくまえのおれがおぼえているわけがない。
賢者の岩山は、王の館の背後にそびえていた。王は、山裾の穴に棲んでいる。穴は大昔からあいているものだ。その昔、天の使いの一族が、翼で掘った伝説が残っている。
おれは、その高いところから、毎日毎日、王の館を見下ろしている。
「あまり下を見るものではない」と、賢者は言う。
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