賢人と奴隷とバカ
19.すべてのオメラスから歩み去る人びとへ──反平等の時代と外部への想像力akishobo.com/book/detail.html?

 “そもそもこの物語は、もちろん功利主義的な思考への批判であるが、しかもそれだけではなく、リベラルな倫理学の思考実験のような形式そのものへの強い反発として提示されている。つまり、それは多数の幸福と少数の権利の対立といった明快な「ジレンマ」として、パズルを解くように解決できる問いとして提示されているわけではない。このような事実に直面したときに、人間がどのように衝撃を受け、どのように葛藤するのか、そしてどのように行動するのか、そのような人間のありようをみつめようとするものだからである。”

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 “それは多数の幸福の側に立つのか、ひとりの不幸の側に立つのか、どちらを選択するのか、といったものではなく、だれかをふみにじりながらみずからが安逸であることに、人間はどう心が乱されるのか、どのようにふるまうのかといったありようをみつめ、そのように心を乱され、ときに行動に移す、その人間の存在のしかたに、ある種の希望を賭けているのである。”

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「オメラスから歩み去る人びと」
『風の十二方位』収録hayakawa-online.co.jp/product/

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