『ある視点からすればいわゆる気が狂う状態とてもそれが抑圧に対する反逆として自然にあらわれるかぎり、それじたい正常なのです。』
“精神病への偏見がいまよりもずっと強かった一九七四年、「全国『精神病』者集団」という団体が結成された。「精神病者」が連帯して差別や偏見に立ち向かい、患者の人権を軽んじる精神科医療の問題を厳しく指摘した団体だ(いまもし続けている)。
引用したのはここに参加した吉田おさみ(一九三一~一九八四年)の言葉。当時、「心を病む」ことは、「その人が弱い・悪い・おかしい」で片付けられていた。心を病んだ人は、とにかく薬を飲ませておくか、長期入院させておけば「問題は解決した」と考えられていた。
その理不尽さに対して、吉田おさみは黙っていなかった。心を病むのは〈抑圧に対する反逆〉として〈正常〉なのだと言い切った。この言葉のすごいところは、返す刀で「では異常なのは何? 誰?」という問いを突きつけてくるところだ。”
#読書
まとまらない言葉を生きる
荒井 裕樹 著https://www.kashiwashobo.co.jp/book/9784760153497
朽ちに→口に