祖母に会うかもしれない話・完結(本人は明るいが人によっては暗い)
生身の人間からは思いもよらない語彙が飛び出てくるもので『小説家になったのね』じゃなくて『文化人になったのね』なところがキャラが立ちすぎている……と思った。
恐ろしいことに父も母ももはや祖母と没交渉なので、私が小説家であることはバレずに済んでいる。ここを説明すると「何で……お父さんはお祖母さんと会わないんですか……?」というもっともな疑問が出てくるのだが、なんでだろう……と思っている。そういう生態なんだろう。
話を戻すと、電話をした結果私は何らかの試験に合格したらしいのだが、十数年の放置でいきなり承認を得てもあんまり……というか話している具合が大分他人だ……と思ったので、それ以来連絡を取っていない。別に電話もかかってこなかった。
のだが、先日祖母から手首を折ったことと手術の日にちが報された。お見舞いに行くべきなのかな……従兄弟は行くらしいな……ていうかお祖母ちゃん弟には一ミリも興味無いのか……? と流石に悩んだ。
けど、今日従兄弟がこのお祖母ちゃんにゲーミングPCとBMW買ってもらったらしいことを知って行かなくていいか……に傾いている。なんだそのハッピーセットは!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
完結
祖母に会うかもしれない話2(本人は明るいが人によっては暗い)
絵は別に得意じゃなかったけれど、それ以来私は「ということはデメリットがある分天才であるはずだろう。まあ、確かに天才な気するしな」とポジティブに生きてきた。少し大きくなった頃に「特別な才能が無いなら顔を見せるなってことだね」と母に解説された時に「えーっ!??!」となったが、確かにそれ以来祖母は私の家に電話の一本すらくれなくなってしまった。
でも別にそこまで悲しくなかった。あんまり優しくされた覚えがない上に、弟に至っては祖母の記憶すらほぼ無いからである。母は悲しんでいた気がする。
流れが変わったのは、祖母が私が小説家になったと知ったからだった。新聞経由でバレた。楽探の時は写真写りの悪さでバレなかったので、何事もプラスの面がある。
祖母を名乗る人から出版社経由で手紙が来て、電話番号を教えたのだが「あなた、文化人になったのね」だった。
その瞬間、この人は長い長い伏線回収を期待していたのだなあという気持ちと、自分の中にある約束のようなものを果たしたら本当にちゃんと連絡を取ってくるんだなあと思った。一貫性がある。色鉛筆だろうがキーボードだろうが、概ね合格ラインの特別さだったのだろう。
祖母に会うかもしれない話1(本人は明るいが人によっては暗い)
父方の祖母が手首を折ったそうなので数年ぶりに見舞いに行くことになるかもしれない。
父は『家を出た子供が実家に帰る意味はあるのか?』という凄まじいタイプの父親なので(この異常なまでのドライさが私や弟が何をしていても何も言われない理由である)祖母と父はほぼ三十年以上顔を合わせていない。私の母と孫である私達だけがこの祖母と顔を合わせている。
という事情からか、祖母は『実の息子の血が流れているから好き』と臆面も無く言うタイプの祖母になった。そんなに好きな息子と生き別れの状態になっている気分はどんなものだろうとたまに思う。
小さい頃はこのお祖母ちゃんのことが好きだった(好きと言えるほど関わってなかったが)のだが、小学生の頃の私の問題児ぶりは風林火山で、それが多動にあると知って、祖母はかなりショックだったようだ。そこから祖母の興味は従姉妹にのみ向けられ、十数年没交渉になった。
没交渉になる寸前に祖母が言ったのが「貴方は普通の子じゃないのだから、きっと他に特別な才能があるはずよね」という言葉で、貰ったのがとても豪華な色鉛筆だった。
自炊一ミリもしたくないが野菜を取る為にしぶしぶやってる
彼女との昔語り
ちなみに太宰の墓の前でフラれた子はついこの間仕事の都合で海外に行ってしまった(赴任前に会う予定だったのだが、何故か爆速で話が進み軽やかに行ってしまった)
高校生の頃、私はよくゴスロリファッションをしていたのだが、その影響は八割その子からだった。というより、本人には言っていなかったけれど、めちゃくちゃ可愛い格好をした彼女と練り歩きお茶を飲みたかったからである。
勿論見た目だけではなく中身も芯があって聡明で魂が気高いので好きだった。未だに会うと緊張する。目が合わせられない。眩しくて。
その子とは別の高校に通っていたのだが、たまたま文化祭の日が被っていたので、これ幸いとばかりに親友の皿(脱法小説集成の表紙を描いてくれた)をそそのかして一緒に学校を抜け出してその子の文化祭に行った。「ほんとに来てくれたの!?」という笑顔で、なんか自分は物凄くかっこいいことを成し遂げたような気がした。なら皿を巻き込むな。ちなみに皿はバレずに学校に戻れたが、私は先生方にマークされすぎていたのでバレてめちゃくちゃ怒られた。
今度こそ彼女に会いに行こうと思う。「ほんとに来てくれたの!?」って言われたい。未だにかっこつけたいんだ。でも多分目、あんまり見えない。これいつか変わるのか?
斜線堂有紀です。面白い小説を書きます。