池田千尋『君は放課後インソムニア』観た。とても良かった。青春モノ、恋愛モノとして1ミリも衒いがなく真正面からエモみでぶん殴ってくるストロングスタイルの作劇と演出にクラクラきた。
後半、主人公の男の子がヒロインに向かって「俺にさらわれて欲しい。俺はお前がいなきゃ嫌なんだ!」みたいなことを言ってそのまま二人で駆け落ち(駆け落ちではない)ロードムービー展開に突入、無から湧いてきたでんでんとの交流を経て満天の星の下で告白(不自然なCGの使い方に微妙な感情を惹起させられる)とか、おじさん遠い過去に置き去りにしてきたはずの青春の光を全身に浴びて塩の柱になっちゃったな……。
さすがにダイジェスト展開が過ぎるし、登場人物の感情の流れに飛躍があり過ぎるだろと思う部分はあるのだけど、役者と芝居のトーンに統一感があるので展開が多少はしょり気味でも作品世界への没入がそこまで削がれない(まったく削がれないとは言ってない)のは強いと思った。
特に主演二人の瑞々しい演技が本当に素晴らしく、少年少女の何ものにも代え難い「いま、この瞬間」を作品に刻みつけるのに一役も二役も買っていた。ように思う。
パスカル・ロジェ『ゴーストランドの惨劇』観た。なかなか悪くなかった。『悪魔のいけにえ』のようなスラッシャー/スプラッターかと思ったら、それは主人公が過去の凄惨な体験を元に執筆したホラー小説の内容でした。と見せかけて実は……という入れ子構造になっており、早い話がホラー版『インセプション』みたいな内容。
語り口はトリッキーだけど、伏線の張り方がしっかりしてるので、それなりにアハ体験があるのは良い。「フェアプレイ」に拘るタイプの本格ミステリファンにすすめられるのかもしれない。
「ホラー愛」や「母娘の絆」みたいな話は洒落臭いと感じる。現実と妄想の往還を繰り返すことによって生まれる灰色の中間状態の不気味さこそが本作の白眉だろう。
陰惨な暴力描写とは裏腹に、画面作りは美しい。そのアンバランスさが作品の魅力に繋がっている。ように感じた。
ポール・シュレイダー『カード・カウンター』観た。これはかなり良かった。本年度暫定ベスト候補もワンチャンある。かも。
「見せる暴力」と「見せない暴力」の使い分けが完璧でこれだけでも鑑賞する価値がある。というか、全体的に演出のキレがヤバい。
オスカー・アイザック演じる主人公のギャンブラーがモーテルに入るなり家具を白いシーツで覆うくだりは、キャラクターの危うさの表現として大変クールだと感じた。この行為そのものにいかなる説明がないのも、映画に豊かな余白を生んでいると思う。
主人公の手前勝手な「贖罪」の果てにもたらされる虚無感とやるせなさは正しくシュレイダー作品の味わいで嬉しくなる。『タクシードライバー』の「自己」変奏としての良さ。
ヴァルディミール・ヨハンソン『LAMB/ラム』観た。アダちゃん可愛いよアダちゃん。なんなら犬も猫もみんな可愛い(尚、犬は……
アイスランドの雄大な自然を捉えたショットの数々に恍惚。これとアダちゃんの可愛さだけで充分元が取れる。
もう少し真面目なことを書くと、羊飼い夫婦のスローライフを丁寧に描き、そこにアダちゃんという「ノイズ」を溶け込ませることで得られる異化効果の凄みよ。
宗教的な含みも独特の雰囲気作りに一役買っているけど、若干雰囲気だけに振り過ぎているきらいもあって、「オチ」の弱さにそれが如実に表れているような気がしないこともない。
ファスト映画なら一時間くらいで終わる話やろ、という指摘は確かにそうなんだけど、自分は好き。
中田秀夫『クロユリ団地』観た。ワケありの登場人物達が怨霊に心の脆弱性を攻撃され破滅する和製ホラーでまあまあよく見るアレなのだが、クライマックス付近での味変がエグい。
中盤あたりでアドバイザーの霊能力者が登場するまではいいのだが、その霊能力者が仲間を引き連れて怨霊と除霊バトルを始めるのはさすがに羽目を外しすぎでは……となる。
ジャンプスケアなどの分かりやすい怖がらせ要素を盛り込みつつも、登場人物の感情に寄り添うような湿度高めの雰囲気を漂わせた作品が、終盤でいきなり『来る』の(言い方は悪いが)劣化版のような方向性に舵を切るのは演出家が途中で自分の仕事を放棄したとしか思えない。
話の進行に合わせて廃人レベルが上がっていく前田敦子と、あまりに情けない死にざまを晒す成宮寛貴、『呪怨 白い老婆』の三宅隆太らしい陰惨な脚本はかなり良かっただけに、演出のブレっぷりがことさら残念に思える作品だった。
休みの日に映画を観ます。時々、本も読みます。