マイケル・マン『フェラーリ』観た。かなり良かった。俺は好き。
序盤の一幕、愛人の家から朝帰りしたアダム・ドライバーに、いろいろあってやさぐれてるペネロペ・クルスが鉛玉ぶち込むくだりが面白過ぎる(当然、外すのだが)。この面白シーンですっかり心を鷲掴みされてしまった。
終盤のレースシーンで「すわ! 加藤泰か!?」とツッコミを入れたくなるような地面スレスレのローアングルカットを拝めてニッコリするなど。クライマックスの凄惨極まりない事故シーンを小細工抜きで真正面から見せる「強い」演出にも感嘆。レーサーの死体がガンダムのAパーツとBパーツみたいに分離してその辺に転がってる……。コアファイターどこに飛んでったん……?
死の影がうっすらと作品全体を覆ってる印象を受けた。テスト走行中やレース本番の事故でレーサーが死に、事故に巻き込まれた人達も死んでいく。子供も死者の葬列に加えられる。
子供といえば、フェラーリと本妻ラウラの子供も本編開始の一年前に病気で命を落としている。
あまりに死の近くにいたせいか、アダム・ドライバー演じるエンツォ・フェラーリという男にはどこか死神じみたイメージが付き纏うが、ラストシーンで愛人との間に生まれたピエロの手を引き、死んだ異母兄の墓に向かう後姿から、不穏さと希望を同時に感じた。
なんとも釈然としないラストに思えるが、自分はそこがいいと感じた。
なお、そのピエロ少年がフェラーリ社の現在の副会長ピエロ・ラルディ・フェラーリである。