豊後水道の地震はメカニズムが違うから南海トラフに直結しないということが多く言われている。

間違いとまでは言えない。
しかし、正確に言えば、法の枠組みで気象庁が調査を開始するのにメカニズムは関係ない。

想定震源域内でのMが重要なのだ(もしくは異常なスロースリップなど、プレート境界の固着状態に変化が起きたと疑われる事象)。

それが規定値を超えればメカニズムが正断層であろうと、南海トラフ地震臨時情報が出る(想定される巨大地震は低角逆断層)。
Mj6.8以上観測で5〜30分後に「調査中」を発表する。
※Mj6.8の理由は、Mw7.0相当の地震をもれなく把握するため。想定はMwだが、これは速報的には把握できないので気象庁マグニチュードで基準を決める必要があった。

南トラ地震臨時情報に関しては何度も訓練しているが、やはりヒヤリとした。
あの地震がM6.8を超えていたら、世の中は暫く大騒ぎである。そして、臨時情報の意味が国民全員にきちんと認識されているとは期待しない方が良い。そういう意味での混乱も考慮しておく必要があるだろう。関心のない人は調べない、備えない。しかし、巨大災害が起きた時には、そのエリア内の人は全員被災者である。

5月末で南海トラフ地震臨時情報の運用開始から5年となる。
臨時情報は体系がわかりにくいと指摘されているが、
これが特に重要となるのは「巨大地震警戒」が発表されたとき。これはもっと強調すべきだ。※日頃の備えは前提

南海トラフの想定震源域では、

①その東側か西側どちらかの領域の地層が先に破壊されてモーメントマグニチュード(Мw)8級の大地震が発生した後、
②時間差で残りの半分が破壊されてまたMw8級大地震(後発地震)が起きる−

という可能性が他所より高い。
(1854年安政東海地震→1854年安政南海地震や、1944年昭和東南海地震→1946年昭和南海地震)

これを「半割れケース」という。

臨時情報の「巨大地震警戒」はこれを念頭に設定されたもの。
M8のあとまたM8が来たら、相当大変なことになるのは間違いない。

後発地震発生後の避難では津波から逃げるのが間に合わない場合、避難する必要がある。※自宅や勤務地などが自治体の定める「事前避難対象地域」になっている場合等。これが重要。

最も警戒する期間は情報発表から1週間を基本としている。
※この警戒期間に科学的根拠はない。社会が我慢できるのはこれくらいだろうということで決められたもの。臨時情報は地震予知ではない。起きるのは2年後かもしれないのだから。

発生当日に投稿を行っている余裕が全くなかったが、8日の日向灘地震(Mj7.1, Mw7.0)により、南トラ臨時情報の巨大地震注意が発表された。

これは確固たる予知や予測ではない。市民が変に慌てることはないが、とはいえ全く何にもしないというのも問題だ。

捉え方としては国民の防災訓練強化版だと思っていただくのがよいのではないかと思う。

巨大地震注意が出された根拠は世界の地震の統計解析によるもので、南海トラフ地震では西から割れたケースは知られていない。

311では2日前にM7.3が起きていたが、これまでの南トラ大地震はむしろ、短期的には前ぶれなくいきなり起きてきた。

しかし311で地震学は反省を迫られ、予知はできない、地震の発生のあり方には多様性があるという考え方になった。
そのような背景、311の反省からこれまでの地震対策を根本的に見直し、日本中で被害想定や長期評価見直しが始まった。

南トラ臨時情報は、予知を前提としていた旧大震法の東海地震警戒宣言を、予知不可能という前提から抜本的に作り替えたものだ。

※昭和からの地震学の予知予測への考え方に興味のある方は「地震予知のブループリント」などのワードで調べてみてほしい(例:地震学会 zisin.jp/publications/document )

東海道新幹線の速度を落とす対応でJR東海に聞いてみたいのは、では普段の速度で南トラ大地震が起きたら人的被害が生じると考えられるのかということ。

南海トラフ巨大地震は何の前触れもなく突然発生する可能性の方がずっと高い。それなら普段から今の速度でという考え方もある。

頻度は低いが甚大な被害を生じる自然災害のために普段から速度を落とすことは、社会的利便性のためにできません、ということなのでしょうかね。

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これについてどこか頭の中で考え続けていた。建前的には非常によく考えられていた対応だったとも取れる。

つまり、こういう時にインフラを担う社としては「何の対応もとりません」という訳にはいかない。
なんかしら対策しましたよ、ということを社会に示すことが重要になってくる。
言い方は悪いが、「やってますよアピール」としてはかなり賢く、うまくいった事例だった。
そうも考えられる。

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