5月末で南海トラフ地震臨時情報の運用開始から5年となる。
臨時情報は体系がわかりにくいと指摘されているが、
これが特に重要となるのは「巨大地震警戒」が発表されたとき。これはもっと強調すべきだ。※日頃の備えは前提
南海トラフの想定震源域では、
①その東側か西側どちらかの領域の地層が先に破壊されてモーメントマグニチュード(Мw)8級の大地震が発生した後、
②時間差で残りの半分が破壊されてまたMw8級大地震(後発地震)が起きる−
という可能性が他所より高い。
(1854年安政東海地震→1854年安政南海地震や、1944年昭和東南海地震→1946年昭和南海地震)
これを「半割れケース」という。
臨時情報の「巨大地震警戒」はこれを念頭に設定されたもの。
M8のあとまたM8が来たら、相当大変なことになるのは間違いない。
後発地震発生後の避難では津波から逃げるのが間に合わない場合、避難する必要がある。※自宅や勤務地などが自治体の定める「事前避難対象地域」になっている場合等。これが重要。
最も警戒する期間は情報発表から1週間を基本としている。
※この警戒期間に科学的根拠はない。社会が我慢できるのはこれくらいだろうということで決められたもの。臨時情報は地震予知ではない。起きるのは2年後かもしれないのだから。
発生当日に投稿を行っている余裕が全くなかったが、8日の日向灘地震(Mj7.1, Mw7.0)により、南トラ臨時情報の巨大地震注意が発表された。
これは確固たる予知や予測ではない。市民が変に慌てることはないが、とはいえ全く何にもしないというのも問題だ。
捉え方としては国民の防災訓練強化版だと思っていただくのがよいのではないかと思う。
巨大地震注意が出された根拠は世界の地震の統計解析によるもので、南海トラフ地震では西から割れたケースは知られていない。
311では2日前にM7.3が起きていたが、これまでの南トラ大地震はむしろ、短期的には前ぶれなくいきなり起きてきた。
しかし311で地震学は反省を迫られ、予知はできない、地震の発生のあり方には多様性があるという考え方になった。
そのような背景、311の反省からこれまでの地震対策を根本的に見直し、日本中で被害想定や長期評価見直しが始まった。
南トラ臨時情報は、予知を前提としていた旧大震法の東海地震警戒宣言を、予知不可能という前提から抜本的に作り替えたものだ。
※昭和からの地震学の予知予測への考え方に興味のある方は「地震予知のブループリント」などのワードで調べてみてほしい(例:地震学会 https://www.zisin.jp/publications/document06.html )